第十一話 ページ11
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それから何もかもが煩わしくなってしまった。
洗濯、ご飯の用意、洗い物、ゴミ出し、基本的には私がやっている。それも億劫になってしまった。
「いただきます」は言っても「ありがとう」は無い。
それどころか「ここ雑じゃない?」「これ先週も作ってたよね」って文句を言ってくる。
しまいには「最近手抜いてるだろ」だなんて言われて、苛立たない訳がない。
でも一々反論なんかしてたらキリがないのだ。
「いってらっしゃい」
玄関まで見送り、バタンとドアが閉まる。
「いってきます」くらい言えっての。馬鹿。
はたして私達は恋人と言えるのだろうか?
今日もまた、苛立ちと悩みに苛まれる。
「あ‼」
休みの日。食糧や日用品を買い出した帰りに、練習終わりの�爐Δ襪気ざ眸鵜瓩海筏榻匏�に出会った。
先に私に気付いた彼が声を上げて、それに反応した私もまた声を上げた。
「侑君! 先月うちの店に来てくれた以来だね」
「なに買い物⁇ 凄い量やな〜貸してみ!」
「いやいやいいよ悪いって‼」
「俺の方がAちゃんより力あるし、遠慮せんでええから! ほら見い余裕やで〜〜」
重くて何度も立ち止まってしまっていた程の大きな荷物を、軽々と上げて見せる。
なんて優しい人なんだ…
練習終わりで疲れている筈なのに。
「ご飯とかAちゃんが作ってるん?」
「うん今日はミルフィーユカツです。臣が好きな梅と、紫蘇とチーズも入れて」
「なんやそれめっちゃ旨そうやん‼」
「やばい腹減ってきた‼」と子供のように隣ではしゃぐ侑君が面白い。
臣もこれくらい私の作るご飯にはしゃいでくれたらなあって思ったけど、もはや誰⁇ ってなるレベルには違和感だったから想像するのをやめた。
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作者名：林檎 | 作成日時：2020年6月19日 16時
