第四十二話 ページ43
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聞こえてきたその名前を呼ぶ方へ反射的に目線が向いた。
それは居酒屋に備え付けられたテレビで、映し出されているのはワイドショーの女性向けに作られたコーナーのインタビューだった。
話題の選手に直撃取材‼ みたいな感じの。
「いつの間に話題になってたんだね。てか良くこーゆーのに出たなあ、嫌がりそうなのに」
「確かに(笑)」
別れてから少しして、臣が日本代表に選ばれたとテレビで知った。
1人でめちゃめちゃ喜んだ事を今でも覚えている。
頑張ったんだなあ、臣の努力が報われた。それに元気にやってる様だったから安心したっていうのもある。
侑君や他にも知り合いのメンバーが選ばれた時はびっくりしたけど。
テレビに映る臣はやっぱり無愛想で、相変わらずすぎて思わず苦笑いが溢れた。
何を質問されても一言で終わらす感じ。
「あれテレビ的に大丈夫なの」
「お姉さん困ってる困ってる」
幾つか当たり障りのない質問に答えた後で専門誌ではまず扱わないであろう問いかけが飛んできた。
『いやあ、でもやっぱりカッコいいですよね‼ ぶっちゃけかなりモテてきたんじゃないですか⁇』
『いえ別に』
これまた一言返し。
せめて少しくらい笑えませんかね。
「もっと何か言え!」
「頑張れ臣〜」
めげずにインタビューを続けるお姉さんに同情してしまう。
許してあげてください。テレビに出てる時点でだいぶ頑張ってるんですその人。
『イケメン過ぎると逆にモテないって感じですかね‼ で、でも過去に付き合った女性は複数人いらっしゃるんじゃないですか⁇』
『いえ別に』
それ以外で返せ‼ そろそろ放送事故レベルになるから‼
ああ、お姉さんもお手上げって顔してる。
「そもそもバレー以外の質問になんで答えなくちゃいけないんだって思ってんだろうな」
「絶対そうだよね」
次は何て質問するんだろう。ってふわ〜っと考えながらジョッキを口に付ける。
黒尾が店員さんに「すみませーん! おかわりのビールください!」と次の飲み物を頼んだ。
インタビューのお姉さんが口を開くより前に、珍しく臣が先程の質問の続きを話し始めた。
途端、私はジョッキを口から離して、テレビから目が離せなくなった。
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作者名：林檎 | 作成日時：2020年7月17日 0時
