第二十四話 ページ25
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「中村さんは、臣さんの事好きですか⁇」
そう尋ねる日向君の声は不安げだった。
知らなかった。臣がそんな風に考えていたなんて。
「うん…好きだよ。でも、」
考えてた。最近ずっと考えていた。
やっぱり私達は一緒にいるべきじゃないのかもしれない。
今の関係を続ければお互いがボロボロになるのが落ちだ。
臣もきっと、私と同じ事を考えている。
でもそれを口に出す勇気はなかった。
言ってしまえば別れて、離れて、また臣が隣にいない日々が始まって。
そしてもう今度こそ“次”はないと確信しているから。
好きだよ。好き。臣が好き。
でもそれだけじゃ上手くいきようがなかった。
私達はきっと、最も辛い選択がベストなんだ。
「…いい加減大人にならないとね」
ゴクッと日向君が唾を飲む音が聞こえた。
この子はただ尊敬する先輩に、私達に幸せになってもらいたい一心で話してくれたんだろう。
ありがとう。日向君。
最後に感謝を伝えて電話を切った。
「……聞いてるんでしょ」
背後のドアの向こうにいる人に声を掛ける。
バレバレですよ。
するとゆっくりドアが開いて、そこから湿った髪のままの臣が立ち止まっていた。
何か言いたげな表情で私の目を見つめてる。
重苦しい空気の中「中入ったら?」と声を掛けると、素直に私の隣に腰を下ろした。
「…ごめんね。せっかくの同窓会だったのに、酔った挙句酷い事言って……」
「…それは全然、気にしなくていい」
お互い視線は下に落ちて沈黙が流れる。
告げなくちゃいけない言葉がある。
お互いわかってる。
言わなくちゃ、私が言わなくちゃ。
これまで何度も臣に言ってきた言葉が言えない。
意を決して言おうと顔を上げて、それに反応した臣もゆっくりと顔を上げて目が合うけど、言えなくて、泣きそうになってきて、
あのね、あのねって必死で、でもその続きは出てこない。
「……もういい」
そう言って私の頬を撫でた臣は、
臣は笑った。
悲しそうに、でも安心させるように優しく笑った。
それから、
「…別れよう、A」
初めて私は臣に振られた。
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作者名:林檎 | 作成日時:2020年7月17日 0時