第二十三話 ページ24
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何気ない会話の中で、臣さんに彼女さんがいるという衝撃の事実を知った俺は思わず声を上げた。
それはチームメイトが全員いる更衣室での出来事であって、勿論皆「どうした⁇」「え、なになに⁇」と興味津々で、「臣さんに彼女さんがいるそうです‼」と勢いで言ってしまい、俺は臣さんに睨まれた。
ごめんなさい。
でも臣さんに彼女さんがいる事実に驚かずにはいられなかった。
失礼かもしれないけど、その年1番のビックリだったと思う。多分その場にいた全員も俺と同じ気持ちだった。
木兎さんの提案でその日会いに行く事になった時には「お前まじで…」とおっかない顔で怒らせてしまって、あの時の臣さん…まじで怖かったな……
隙がなくって、しっかりしてて、潔ぺ…几帳面で、そんな臣さんに彼女さん……想像がつかない。
でもいざその彼女さんに会ってみればなんかしっくりきた。
なにより臣さんの表情が優しかった。
仕事中の彼女さんの事目で追ったりして、あの臣さんが…‼ あの臣さんが愛おしそうな目で見てる‼‼
「……なに」
「え、あ、いや、彼女さん‼ すっごくイイ人ですね‼ なんか俺、羨ましいです‼」
「なにそれ」
あ、本当に彼女さんの事大好きなんだな。
俺は恋愛とかそーゆーの疎いけど、そんな俺でも分かるくらい臣さんは彼女さんの事が大好きなんだ。
尊敬する先輩の意外な一面を見て嬉しくなった。
なのにどうして2人は別れてしまったんだろう。
お互い好き同士で付き合った筈なのに。
臣さん、あんな風に笑ってたのに。
なのにどうして中村さんは侑さんと付き合っちゃったんだろう。
「……臣さん、大丈夫ですか…」
「……うるせえ」
それからの臣さんっていったら気の毒なくらい傷心してて、俺よりもずっと大きな背中が小さく見えた。
まるで捨てられた子猫のように。
眠れてないんだろう、目の下にクマを作って、練習や試合に影響は出してないものの皆心配してた。
だから、侑さんには悪いんだけど、本当にごめんなさい。
臣さんと中村さんがヨリを戻したって聞いた時「良かったですね臣さん」って、喜んじゃったんだ。
でも臣さんは、
「…あいつがまた俺にうんざりするのは目に見えてる。そしたらまた宮の所に戻るし…それまでせいぜい、2度と泣かさないようにするだけ」
あの時みたいに、笑わなかった。
苦しそうに、涙なんて一滴も流していないのに泣いているように見えた。
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作者名：林檎 | 作成日時：2020年7月17日 0時
