第一話 ページ2
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ピンポーン
インターホンが鳴り響く。
そこから臣の声が聞こえるのを、待ちながら心臓はドキドキしてる。
しかし中に居るはずの住人はインターホンに答えない。
寝てる⁇ あ、てかそもそもまだこの部屋に住んでるかどうかも分からないんだった。
どうしよう、もう1度押して、それでも出なかったら改めようかな。
………出ない。
405号室の前に立ってもう10分は経ったと思う。
仕方がない。今日はもう帰ろう、そして古森君にメッセージで臣が今どこに居るか聞いてみよう。
その場を去ろうとした瞬間、ガチャっと扉が開く無機質な音。
えっ、て声が出るより先に、扉から出てきたその懐かしいクセのある黒髪の人物に息を呑んだ。
「臣、」
零れ落ちたように口から出た元彼の名前。
臣の表情からは困惑が読み取れる。
言葉を探している様だった。
気まずい空気が流れる中、先に声を掛けたのは私。
「取り敢えず、中入っていい?」
「ああ…」
元々は自分の部屋でも合ったけど、2年も前の話だし今では臣が1人で家賃を払っている訳だから「お邪魔します」って言って部屋に上がる。
最初に驚いたのは、部屋の家具や雰囲気はあの頃のまま何も変わっていなかった事。
「絶対いらない、邪魔」って言われた観葉植物も、臣があれから世話をしてくれていたのか元気に咲いていた。
「…適当に座って、コーヒー入れてくる」
「ありがとう」
緊張感だけがこの部屋を包み込んだ。
電気もつけず、月明かりだけが私達を照らしている。
その薄暗さが今では丁度良かった。
お互い、電気をつけようという考えは頭にないようだ。
無言でマグカップを差し出される。
ソファーに座る私の隣には腰掛けず、私から見て斜め左側のカーペットの上に腰を下ろした。
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作者名：林檎 | 作成日時：2020年7月17日 0時
