「か」って言わなかっただけ。 (ページ10)

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気になっちゃっただけ。ページ10

しげside

「しげー」
「おーかみちゃー」

今日神ちゃんとメシ行きたいなぁと思ったんは、大した意味はない。
なんとなくわだかまっていた憂鬱は、昨日会った女の子が吹き飛ばしてくれたことだし。

せやけど、このぽかぽかした気分の中一人で過ごすのはもったいないなと思っただけや。

「なんかしげ、すっきりした顔してんな」
「おーちょっといいことあって」
「へーよかったやん」

神ちゃんはきっと俺の不調にも気づいていたんだろう。
何も言わなくても、お互いのことは大体分かる。
神ちゃんがほっとしてるのも分かってるで。

「ありがとなー」
「なんや急に」

「でりゃ」
「おい！」

照れくさくなって、体当たりしてみる。

「ウザ絡みとか普段あんま俺にせえへんやろー」
「してほしいんかー？いっくらでもしてやるで！五歳児しげちゃんをたぁーんと召し上がれ！」
「いらん！」

マジ話すんのも照れるし、長い付き合いの神ちゃんにウザ絡みすんのも照れる。

「ほんっまにめんどくさい性格やなぁ」

見透かしたように、神ちゃんがやれやれと首を振った。

「なんかなー、すーちゃんがな。あ、末っ子な？朝帰りしてきたんよ。素敵な出会いがあったとかゆーて」
「え、悪い男に騙されとるやんそれ！やばいやばいやばい」
「俺もそう思ったんやけどなぁ。なーんかすっきりした顔になって帰ってきたから、まあよかったんかなぁと思って」

今日神ちゃんはすっきりした人間に会うのが二回目ってことか。

「神ちゃんの妹かぁ。ちっちゃいころ以来会ってへんわ」
「特に末っ子は恥ずかしいから嫌やーゆうて、メンバーに写真見せるのも禁じてきてるからな。まぁライブには来てくれとるから、会おうと思えば会えるで」
「えー楽しみ」

会話もひと段落して、巨大パフェに取り掛かる神ちゃん。

手持無沙汰になって携帯をいじると、新たに追加されたLINEが目に入る。

不思議な子ぉやったなぁ。

かなり小柄で高校生か中学生だと思った。
まっすぐの綺麗な黒髪の中に一筋、紅く染められた髪が隠れていた。
男口調に近い標準語を喋るのに、高い声だったからかえってかわいらしい。
ギターの腕前は大したもので歌声も透き通るようだった。

でも、俺を惹きつけたんはちぐはぐさすら感じる女の子の不思議なかわいらしさだけではなかったと思う。

「なーんか、馬が合ったんよなぁ」

人間関係なんてそんなものか、と思いながら彼女にLINEをする。

つい昨日できた、年の離れた友人に。