「か」って言わなかっただけ。 (ページ38)

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らぶりーなだけ。ページ38

イルミネーションに彩られた駅前の道を抜けて、辿り着いたのは落ち着いたカフェだった。

「濱田軍団に教えてもろてん」

にぃっと笑って、木造のドアを押すと、ちりんとドアベルが鳴った。

「うわぁ…綺麗」

奥まった席からは、輝くイルミネーションやツリーがよく見える。
町の喧騒がうそのように落ち着いた空間だった。

「隠れ家みたいやろ？」
「ん」

しげはくつろいだ様子でマスクを取った。
メガネは取らないようだから、普段使いの度入り眼鏡なんだろうな。

メニューを開くと、クリスマス仕様になっていた。

「ニラはないね」
「クリスマスにニラ料理頼むほどムードない男やないで？」

ひげを生やしたナイスミドルな店主さんが注文を取りに来た後、しばし手持無沙汰になる。

「Aさぁ、なんで隠しとったん？」

その、神ちゃんの妹ってこと…としげは歯切れ悪く切り出した。

「あのね、出来心だったんやけど…ともの影響なしに仲良くなりたかったのかも」

これも事実だが、最近隠していた理由は多分違う。
子供扱いされて、恋愛対象から外されたくないという意地もあった。

「そっか」

顔を上げると、ふわっとひだまりみたいに笑ってた。
怒られるかと思ったから拍子抜け。

「黙ってて、ごめん」
「いや、俺もなんで気づかんかったんやろ」

よくみたら結構似てるのにな、とまじまじと見てくるから、めちゃくちゃはずい。

「あんまし関西感なかったから？」
「せや。自分標準語やったから」
「さばさばした口調っていうのに憧れがあったんだ。同級生に小動物扱いされるんが嫌だったから」
「えー小動物かぁ。神ちゃんもそっち系統やからなぁ」

恥ずかしくなって窓の外を見ると、白い雪が降りだしていた。

「しげー！雪！雪だよ！」
「わぁっ！ほんまやー！」

子供よろしく窓に掌をペタっとつけて食い入るように外を見る。

「ほんまにラブクリやなぁ」
「ラブクリだねぇ」

しばらく見惚れていたら、料理が運ばれてきた。

「…見られてたな」
「…はずいな」

二人顔を見合わせて、ふふっと笑った。