「か」って言わなかっただけ。 (ページ22)

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向いてないだけ。ページ22

夏。

海だ！
プールだ！
青春だ！

…なんてなるわけもなく。

アイスとギターとスマホ漬けの毎日であった。

かといって暇かと言われるとそうでもなく、学祭の準備に追われていた。

ずごごごー

「A、うるさいよ」
「や、女子力高い食べ物って、食べるのむずない？」

タピオカ然り。クレープ然り。そしてフラペチーノ然り。

「なつめは夏を謳歌してるなぁ」
「彼氏と海行ってきた～」
「…日焼けに苦しめ」
「Aはいつも白いね。うらやまー」
「剥けるから」

剥けるのは事実だが、そもそも焼けるほど屋外に出ていない。

「そっかぁ。なんか委員で忙しいんだっけ？」
「うむ」

間接的にとものせい。
なぜか私の素性を知っていた学祭委員長と、神山智洋の妹だということを秘匿することと引き換えに仕事を手伝う取引をしたのである。

「まぁ楽しいよ」
「A、そういうの好きだもんね」

たまに、ともにアドバイスを貰いつつ(委員長の狙いはここにあったのだろう)、タイムテーブルやら演出やらを考えるのは、結構性に合っていた。

「けどLINEがえぐい」
「もともとが少なすぎたじゃん」
「交友が広がったよ」

「えーじゃあなんか良い出会いとかなかったの？」
「うーん…」

だらだら話していると、一人の男子が近づいてきた。

「神山さん、奇遇だね」
「…ども」

「いつも助かってるよ。明日の委員会でもよろしく」
「こちらこそ」

頭ポンポンして去っていくあたり、できる人(陽キャ)なんだろうな。

「え、なに委員長？めっちゃいい雰囲気じゃん！」
「そう、なのかー」

イケメンだし。
爽やかだし。
なんかできる男っぽいし。

と列挙して目をキラキラさせるなつめ。

「…ぶっちゃけ、あり？なし？」
「…なしとは言えないけども」

やったじゃん！と自分のことのように喜ぶなつめ。
だけど、なぜか私には他人事みたいに思えた。

「そろそろ学祭の広告も上がってきたねー。拡散しとかないと」
「あぁ…拡散するほど友達いないからな私は」

あぁ…でも、しげに学祭の話してみよっかな。
来れないとは思うけど、色々聞いてもらいたいし。
当日写真を送るのもいいかも。

私からLINE送るの、あんまないけど、いいかな…。
しげもまめなほうじゃないし。たまに謎な写真が連投されるが。

A学祭準備、楽しい。

返信来るといいなぁ。
ニララーメンの日のツーショットを眺めてから、スマホをしまった。