トルアイアングル③...Ryosuke&Yuri... (ページ15)

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掴んだと思ったそれは
するり、と手のひらを抜けていって

空を掴んだ行き場のない手を、
僕はただ握りしめていた。

今日もAからの連絡は、ない。

一緒に見るはずだった花火大会の前日。
そこからパタリと連絡がとれない。

あの日体調不良を訴えた彼女を疑う理由なんてなくて。

勿論残念な気持ちはあったけど、
別にこれきりなわけでもないと思ってた。

僕は完全に、油断していたんだ。

侑李「…Aと…何かあったの」

涼介「…なんで？」

侑李「なんで……って、」

涼介「それ。
聞いて、知念、どーすんの？」

遮るように言葉を発し、煽るように睨みつけてくる涼介に少しだけ怯む。

Aが連絡してこないのには、
それなりの理由があるのは間違いなくて。

それはきっと、
僕に言えない｢何か｣があるから。

花火大会の前日に
〝体調不良〟だと言ったA、

その翌々日のレッスンに
〝体調不良〟で来なかった涼介、

ただの偶然だとしても、どうしても、二人の間に何かあったんじゃないかと勘繰って、胸がざわついていた。