Phase08 ページ10
屋敷の半分ほど吹き飛んでいた。
蔦の絡まる西洋風の屋敷だ。右手側の半分は手入れの行き届いた古風な屋敷であり、左手の半分は黒い瓦礫の山だった。
瓦礫には残り火ごくすぶり、灰色の煙をあげている。
屋敷は住宅街から離れた人工林の奥にあるために、怪我人や見物人の姿はなかった。その代わり、七、八人の銃を持った人間がいた。屋敷に向けてこ銃を構え、時々乾いた銃声を響かせている。
「始まってるね」
林の奥に隠れながら、太宰は云った。
その近くには中也、文也、そして零魔の姿がある。
「派手な爆発痕。あの爆発のど真ん中に入れて貰えば、苦しまずに吹っ飛んで死ねたんだろうなあ……」
「あーはいはい。後で幾らでもぶっ殺してやるから、今は集中しろ」
中也の蔑んだ視線が太宰に突き刺さる。その視線すらも物ともせず太宰はのんびりと建物の壁が吹っ飛んだ破砕音を聞いていた。
……と、ここで中也がある事に気づき零魔を見る。
暇を持て余した零魔は木の棒で何か描いているようだった。
八×八の正方形の
殆どの升に白と黒の石が置かれており、後一手で終わりという場面だった。
「おい、零魔」
何故呼ばれたのかわからない、とでもいうように顔を上げ首を傾げる零魔。
「……なに？」
「一人
どがっと強く握られた拳が零魔の頭に落とされる。
痛い、と呟く彼女に中也は一睨した。
中也が舌打ちをするとツンツンと横腹を突かれる。
文也だった。
「兄さん兄さん。そんな大声をあげたら……」
「両手を上げて振り向きなさい」
優しい男の声が後ろから聞こえた。
言わんこっちゃないと文也に睨まれ中也はやや気まずそうな顔をする。がそれは一瞬で各々顔を見合わせて後ろを向いた。
そこには暗灰色の野戦服を着た男が立っていた。
大木のようにどっしりとしていた男だ。
拳銃を文也に向けている。
「何だ、子供ですか」
拳銃を持った男は意外そうな声を出した。
「てっきり増援部隊かと。マフィアが人手不足なのか、あの蘭堂とかいう男に人望がないのか……」
蘭堂？中也が眉を寄せる。
誰だそりゃとばかりに文也を見るが文也は知らないとばかりに肩を竦めるだけで何も言わなかった。
「す、すす、すいません！僕達はただの……近所の子供です！」
太宰が恐怖に震える声を出した。
「蘭堂さんの家に配達に行く途中で、だから……」
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作者名：フェルマーとSasa猫 | 作者ホームページ：無し
作成日時：2022年7月15日 20時
