Phase01 ページ3
どこにでもいる平々凡々な彼女はどこまでも広がる青空を眺めていた。暫くの間瞳を瞬かせていると、なんの前触れもなく急に息を吐いた。だが、その息には感情の色はない。ただ単に居場所が無くなったから吐いた、とでも言うような無意味さだけを漂わせて。
「……あった？」
「手前は相変わらず主語がねえな」
何かあったのか、そう聞きたかった彼女であったが出た言葉はまたも無意味な言葉。それに突っ込んだ中也とそれを見ている文也。いつも通りの彼らの取り止めのない話は内容はアレだが微笑ましいものである。
裏社会からは大層な渾名で呼ばれている彼らも、争いがなければただの幼子だ。だが、何気ない会話も文也の一言で凍りついてしまった。
「ポートマフィアが兄さん達の縄張りで彷徨っているらしいのじゃ。それで、兄さんは────」
「分かった、行く」
見た目に反し古風な喋り方が特徴的な少女、中原文也はチョーカーにあしらわれた十字架が揺れる。零魔が言葉を切り裂いてそんな返事をしたが、少しボーっとし始めたのを察した中也は異能力を使用して零魔を運ぶ。
「文也…………助けて？」
「何故疑問系なのじゃ」
文也がそう問えば表情を変えずに彼女は悩む仕草をする。悩んでいないのにそんな仕草をするなど無価値である。彼女は本当に“無”が形を成したような人物だ。だからこそ何にも囚われないのだが。
目的が見つかるまでまた他愛のない話をする。彼女があまりにも奇天烈で頓珍漢な話をし始めた時は中原兄妹はすぐさま静止の言葉を吐いた。
その、止めなければ面倒臭くなる、という気配を隠すことなく滲み出している2人とは対照的に原因である彼女は首をかしげる。
「アレは──────」
にやり、と言う効果音がつきそうなほどに中也は獲物を見つけた捕食者の笑顔になった。その瞬間、無かったはずの重力が再び零魔の体を地球の中心へと引っ張り、彼女は上半身から地面に叩きつけられた。
痛い、なんて言っているが痛がっている顔ではなくいつもの無表情。そして傷など何処にも見当たらないので恐らく嘘なのだろう。
「じゃあ、頑張って」
多分、面倒事に巻き込まれるけど。と言う言葉は吐き出さずに飲み込む。中也はその言葉と同時に男は接近し、容赦なく吹き飛ばした。
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作者名：フェルマーとSasa猫 | 作者ホームページ：無し
作成日時：2022年7月15日 20時
