Phase15 ページ17
「何て？ 聞こえない」
「判ってるっつうの！」
噛みつくような顔で咆える中也。それに驚いた零魔が「わあ」と食べかけの
「狂犬、そっくり」
「零魔それは兄さんに失礼じゃ」
他意のない。ただの純粋な言葉しか吐けない零魔に文也は突っ込む。相棒のことはある程度判っているのだろう。……行動が奇天烈極まりないため判っていない部分の方が多いのだが。
「頭を撫でんな！」
犬を撫でるような手つきでわしゃわしゃと太宰に撫でられている中也を見て、真似をするような零魔も文也を撫でようとするが、身長が10歳と然程変わらない彼女では撫でることはできず、仕方ないとでも言いたげに諦めた。
「なんで、笑うの？」
「ひー……いや、なんでも──」
ない、と言おうとした瞬間、文也はフードを被って零魔を見えないように隠した。何がなんだか判っていない彼女だが文也の少し焦った、されど真剣な表情を見て息をひそめた。
「あいつら？」
中也も同じく顔を隠している。零魔が文也の体からひょこり、と顔を出して店内全体を見回すと入り口あたりに視線が釘付けになった。
そこには三人の若者が、何かを探すようにきょろきょろと周囲を見回していた。全てを悟った彼女は出していた顔を隠して耳を傾かせるがゲームの音だけが拾われて使い物にならない。
「あの青い帯……慥か《羊》の構成員が身につけている目印だね」
太宰は三人組を見て、背を向けた中也。そして遠くで身を潜めている二人を見た。
「彼らに遭遇すると、何かまずい事でも？」
「連中と会っていい状況じゃねえだろ、察しろ！ あの零魔でも察せたんだぞ！」
何故かディスられた零魔だったが聞こえていないのか、はたまた興味がないのか。ただひたすらに気配を殺すことだけに集中しているが不思議と緊張感は無かった。
「おおーい中也君に文也ちゃん達！ さっさと仕事をしに行くよー！ 首領からの命令だろーう？」
「手前っ……！」
中也が小声で毒づくのとほぼ同時に、三人組が中也達の名前に反応した。隠れられないと判断した二人は何かあった時のために中也の隣に移動するが、文也の目つきは少し鋭い。大方兄に迷惑をかけた太宰に対してのものだろうが。
《羊》の構成員を有象無象と思っている彼女は三人組には視線を向けない。負ける必要すらないのだ。
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作者名：フェルマーとSasa猫 | 作者ホームページ：無し
作成日時：2022年7月15日 20時
