Phase13 ページ15
寒い、と呟きながらも蘭堂は説明する口を閉じることをしない。とんだ忠誠心だ、と心の中で感心すると同時に気持ち悪い、とも零魔は感じていた。
「誅伐する必要はないんだ。僕達の目的は先代復活の嘘を大衆に晒すことなんだから。てことで蘭堂さん、聞きたいことがあるんだけど」
「ううむ、いいとも。銀の託宣を持つ者の指示には逆らえぬし……。そうでなくとも森殿は私を高く取り立ててくださった恩人……」
森殿、という人物を知らない二人はどのような人物なのだろうか、と想像してみたがどうでもいいと判断し、すぐに浮かべていた想像を崩壊させた。
「それはよかった。それじゃあ、蘭堂さんが擂鉢街で目撃した。《荒覇吐》について詳しく教えて貰おうかな。犯人に繋がる情報は、今のところそれしかないから」
「ああ……あれは……善く覚えているとも」
蘭堂は、毛布を顎に埋めるように俯いた後、小さく「忘れるものか」と云った。
「蘭堂さん?」
「……寒いの?」
太宰達は蘭堂を見た。彼の手が震えている。太宰と零魔はすぐに判った──この震えは、寒さとためではない。別の、
恐怖からの震えだ。
現に蘭堂の寒色の瞳には、はっきりと恐怖が揺れていた。太宰は蘭堂がこれほど怯えた顔を見たことはなかった。
蘭堂の──百人の屍が転がる抗争の路上であっても眉一つ動かさぬ凄腕の恐怖する姿など、誰もみたことがない。
「詳しく話してよ蘭堂さん」
太宰はうっすらと笑った。中也の「気持ちわりい」なんて言葉を無視して太宰は言葉を続ける。
蘭堂は一つ咳払いをし、陰鬱な目で四人の少年少女を見比べてから、口を開いた。
──蘭堂の言葉は途切れた。
それ以上は恐らく言えないのだろう。そうでなければここまで恐怖を顕にしない。全員が、すぐには口を開かなかった。
「すまない……君達は先代の復活を《荒覇吐》の力のおかげではなく、敵異能者による偽装であると証明したかったのだろう。
だが、今の話を森殿に報告すれば……むしろ《荒覇吐》という神の実在が現実味を帯びてきたように森殿は感じる筈……。君達の調査が無駄足になるやも」
「いや、なかなかに興味深い話だったよ」
太宰は笑顔で云った。零魔は腕を組みながら考える仕草をして、「分かった」と呟く。彼が話をしている時、ずっと中原兄妹を見ていた彼女が本当に分かったのか中也は少し訝しんでいたのは零魔には分からないだろう。
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作者名:フェルマーとSasa猫 | 作者ホームページ:無し
作成日時:2022年7月15日 20時