Phase12 ページ14
「うう寒い……風通しが良くなって三倍寒い……風の当たらない土の中で、蝉の幼虫のように残りの人生を過ごしたい……」
屋敷の二階で、準幹部の蘭堂が震えていた。
屋敷内は荒涼としていた。
爆発のために壁材が剥がれ照明は天井から落ちて割れていた。
棚の小物は残らず床にぶちまけられ、青い皿やら、苔色の本やら、橙色の絵画やらが床の上を賑やかに彩っていた。
最後のおまけに敵兵の死体が床のデコレーションとして添えられ赤い血液が全体を統一感を出していた。
まるで前衛芸術じゃな。文也は思った。
「災難だったねえ、蘭堂さん。はいこれ、暖炉にくべる木材」
「うう……助かるよ太宰君。この屋敷に暖炉があって本当によかった………なければ手っ取り早く暖を取るため、焚き火の中に飛び込んでいたところだ……」
太宰が手渡した木材を毛布にくるまった蘭堂が暖炉へと放り投げた。暖炉の中の火は焼却炉もかくやというほど轟々と燃え盛っている。
「おい包帯野郎、今の木材、どっから持ってきた?」
「この家の柱」
太宰は平然とした顔で云った。
荒れた応接間で太宰と中也、文也、零魔の四人は蘭堂に会っていた。ちなみに文也と零魔は蘭堂と会うのが初めましてなのでつい先ほど自己紹介を軽くした。
「蘭堂さんが襲われた理由は、おおよそ想像がつくよ」
太宰は床に転がっていた本を暖炉に適当に放り込みながら云つた。
「『噂の拡張』だ。森派の蘭堂さんが爆発で殺されたとなれば、人々は“先代の怒り”をより強く実感するだろう。実際、ここに来る前に《GSS》の指揮車を調べたら、黒い爆発を偽装するための手順書が見つかった」
「黒い爆発、とは……?」
蘭堂が震えながら訊ねた。
「僕も詳しくないから専門的なところは後で調べるけど、ナトリウムランプを光源にした薬品による炎色反応を利用すると、黒に近い色の炎が作れるらしい」
太宰は拾ってきた書類を眺めながら云った。
「まあいずれ、
「……つまりこういうことじゃな」
ずっと黙っていた文也が口を開く。
「《GSS》の連中がマフィアを仲間割れさせるために《荒覇吐》になりすまし、お主を襲ったがしっぱいした、と」
「そうなる」
「んじゃ一連の黒幕は《GSS》の大将?」
「その、可能性………が、高い……」
こくりと頷く零魔にそうか、と文也も頷いた。
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作者名:フェルマーとSasa猫 | 作者ホームページ:無し
作成日時:2022年7月15日 20時