phase10 ページ12
「なんでお前が誇らしそうなんだよ」
ペシッと頭を叩かれ文也は「痛っ」と云う。無論それほどの痛みはない、加減されていることを彼女は知っていた。
「手前は見てただけだったな。役立たずの包帯野郎?」
憎らしげに嫌味っぽく云う中也。
「暴れん坊自慢の小学生と違って、僕はちゃんと敵の通信から情報を取ってた」
「私も……はたらいた」
誉めてもいいんだよ、とばかりの態度に文也は「おーよしよし」と彼女の頭を撫でくり回した。
太宰の手にはいつの間にか通信機が握られており耳に当てていた。
「通信によると、君が今ぶっ飛ばした人の叫びを聞いて、残りが応援に駆けつけてるらしい」
太宰が云い終わると同時に、十名ほどの人影が現れた。
銃を持った人影だ。太宰と達を包囲するように広がり、四人に小銃を向けている。
「おお。怖い怖い。主らの顔はまるで鬼のようじゃ」
戯けたように肩を竦める文也はチラリと中也を見る。
「どーする?兄さん、何か音楽でもかけるか?」
「ハードロックなやつな」
「でも、音楽、持ってきて、ない」
「そうか。零魔、今日は持ってきてないんじゃな。私はラジオ体操第一のCDならあるんじゃが……」
「なんで逆にそれは持ってるの君。莫迦なの?」
そう何処から音もなくすっと取り出すCDを持つ文也に思わず突っ込む太宰。その目はやや引いていた。
「隊長がやられている!標的は重力使いだ!
一斉に銃火が上がる。
地面を蹴った中也が黒い残像となった。
そして戦闘になった。
ーーーもしも一方からの攻撃が全く効果を持たずただ蹴り飛ばされるだけの一方的な暴力を戦闘とよべるとすれば、だが。
「あーーなんか兄さん、とても楽しそうじゃ」
一方的な殺戮に思わず彼女は声を上げる。
しかしその声に感情は乗っていなかった。
事実を口にした。ただそれだけである。
「終わりだ。襲撃の目的を教えろ」
敵陣は残り一人。
奴から話を聞くために残しておいたのだろう。
林の中を中也が近付く。
王侯のように、ゆっくりと、時間をかけて。
「《荒覇吐》について知ってる事は?何故マフィアの準幹部を狙った」
「くそ……お前みたいなガキに……!」
最後の敵は小銃を捨て。腰の予備の拳銃を抜いて構えた。
「やめとけ」
中也は表情すら変えない。
その拳銃は中也にとって脅威ではないからである。
「銃は仕舞ってろ。どうせその怪我じゃろくに中りゃしねえ。撃つだけ危険だ」
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作者名:フェルマーとSasa猫 | 作者ホームページ:無し
作成日時:2022年7月15日 20時