Phase09 ページ11
太宰の演技を見ながら彼女は拳銃を持った男に近づいてトントン、と一定のリズムで彼の躯を叩く。男はこの四人の中で一際身長が小さい彼女を拾われた子供が何かだと勘違いしている。だからこそ何の警戒心も抱かずに彼女に視線を向けた。
「どうしました？」
「教えて」
は？ と訳が分からないという言葉を吐き出した男に向かって零魔はじっと見つめ返すだけ。我慢が出来なかったのか、中也はなんとも言えない空気を切り裂く。
「おいオッサン。
お互い時間を節約しようぜ。あんたが俺に一発撃つ。そしてたら俺が反撃にあんたを隣町までぶっ飛ばす。
ついでに残った襲撃者も全員ぶっ飛ばす。それで襲撃はお開きだ。どうだ？」
「撃たなくとも、兄さんは容赦なく全員吹き飛ばすであろう」
文也の言葉に図星を突かれたのか「うるせえ！」と乱暴な返しをされる。零魔はメモ帳で聞き逃さないように言葉をメモし終われば、太宰と共に頭を振った。
「せっかく演技で騙して、情報を引き出そうと思ったのに……」
「中也。だから、仕方ない」
飽きたのか中也にはバレないように彼女はまた一人
彼女に出るのは、精々相手から情報を引き出すか、記憶するかの二択なのだから。
「ほら、早く撃てよ」
自身の額を銃口に押しつけて、中也は笑った。あれは何を言っても無駄だろう、と察した零魔はオセロを終わらせる。つまらなかったのか、次は一人
「どうするのじゃ、太宰」
「……はあ、このまま見てるだけでいい」
変に中也を刺激すれば此方に矛先が向く。そう判断した太宰は近くで二人の戦い……否、一方的で圧倒的暴力を眺める。文也もそれに従って立ったまま太宰と同じ方向を見た。
「マフィアの傘下なんぞに降ってねえ。腹立つ勘違いするな莫迦野郎」
男は仰向けに倒れた。脳震盪を起こし、気絶している。当分は起きないだろう。起きたとしても彼はあまり良くない処分を受けるだろうが。
「はあ、お美事」
乾いた拍手と、何かが地面を叩く音があがる。前者は太宰の、後者は零魔のものだ。
「敵が直線で放った拳よりも、それに反応して放った回転軌道の蹴りのほうが疾いとはね」
「兄さんじゃからな、あのような者には遅れを取らぬ」
誇らしげに、文也はそう言えば零魔が投げた面子が倒れた男に突き刺さった。
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作者名：フェルマーとSasa猫 | 作者ホームページ：無し
作成日時：2022年7月15日 20時
