ア・ポステリオリ【宮治】

振り子みたいに揺れている ページ5

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治くんはあの日みんなの前で、わたしのことを落とすと言った。
そしてその言葉にたがわず、隙あらばわたしに爆弾を落としてくるようになった。
といっても、彼氏彼女という関係を免罪符に無理やり手をつないできたりなんてことは一切ない。告白した時に抱きしめられたきりだ。
わたしの隣にいるための合理的理由としてこの関係を使うことはあれど、わたしが本当に嫌がることはしなかった。

まだ治くんのことを好きになったわけじゃない。
けれど、その優しさに漬け込んで、彼に甘えていたいと思うこともある。
治くんはそんなわたしを落としにかかってくるとは言え、急かすことはしなかった。ゆっくりでいいと。

彼はそういう人だ。ずるいのに、でもちゃんと正直だった。

部活を終えて校舎を出ると、部室棟の方が騒がしい。
大方どこかの部活が部活終わりではしゃいでいるところなのだろうと思い、部室棟の方へ向かう。
男バレかもしれない、そうだったら嬉しいと思いながら。


やっぱり騒ぐ声はバレー部のものだった。
ぞろぞろと体育館からシューズとサポーター片手に部室へと戻る集団がある。
わたしは部室棟の軒先に立って、治くんが来ないかと待ってみることにした。


「えっ、近藤？」


手持ち無沙汰で携帯を見ていたわたしは、その声に顔を上げた。
驚いた顔をした治くんが、隣にいた角名くんに持っていたシューズとサポーターを投げつけたかと思うと、勢いよくわたしの前に駆けてくる。


「なんでおるん！？」
「部活終わって外出たら声聞こえたから、もしかしたら会えんかなあって」


わたしの言葉に治くんはさらに目を丸くして、それからわたしの両肩を掴んで言った。


「……好き、何それ、好き」
「えっ、わたしはまだ好きやないで」


どう返していいかわからなくてついそう返したけれど、治くんはそんなことは分かり切っているといった態度のままわたしにまくし立てた。


「俺三秒で着替えてくるからそこで待っとけ、ええな？」
「わかった」


さすがに三秒は無理だったけど、だぼだぼのトレーナー姿からジャージ姿になった治くんが戻ってきたのは早かった。

勢いの良いお先に失礼します！ という声が聞こえたかと思うと、部室棟の外階段を一気に駆け降りる足音がする。

治くんはお待たせ、と言ってわたしの隣に並んだので、そのまま一緒にバス停へと向かった。

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