海へ、 ページ22
比嘉中の人達は海岸に救命ボートを出し、脱出を試みている様子だった。
いくら沖縄で生まれ育ったとはいえ、救命ボートで潮の動きに任せて脱出するのは不可能であろう。
それに、渦潮が生まれる可能性だって十分あるのだ。
「木手さん！！！」
私は走って木手さん達に近づく
跡部「おい木手、何でこんなこと」
木手「理由は簡単です、君の好きにされたくないからですよ」
跡部「お前ら何か勘違いしてるぞ」
木手「ﾌﾝ…今更そんな見え透いた嘘に乗ると思っているのか？無駄だよ。」
普段から敬語を使う木手さんの口から、敬語が消えた。
完全に何かを断ち切るという腹を括った様子が強く伺えた。
跡部「おいよせ！！この当たりは複雑な海流で危険だぞ！！！」
木手「私達は5日間この海を観察してきた。そんな様子は1つも無かった。君達はここで好きなだけ潰しあっていなさい。では」
救命ボートを繋いでいたロープが解かれ、木手さん達は勢い付いて流れ出す。
「跡部さん、あれ」
木手さん達が流されていく方向には、1つの渦潮が出来上がっていた。
急いで私と跡部さんは、もう1隻残っていた救命ボートに乗り込む。
跡部さんにお前は危険だから来るな。と言われたが、黙って見ている訳にも行かないだろう。
木手さん達の乗る救命ボートに近づき、重りをつけたロープを投げつけ、精一杯お腹から声をあげる。
「そのロープを早くボートに！！」
跡部「何をグズグズしてる。死にてぇのか！！！」
木手「Aさん、跡部…」
そう言うと木手さんは自分達のボートにロープを括り付ける
が、2隻の船は渦潮に近付く一方だ
このままバラバラにボートを漕いでいたら、渦潮に猪突猛進してしまう。
「跡部さん、木手さんたちのボートをこっちに引き寄せて、こっちの船に移動して貰いましょう、あっちのオールとこっちのオールふたつ使えば逃げきれます」
跡部「そうだな。」
木手さん達も同じことを思っていたらしく、状況は直ぐに伝えることが出来た。
木手さん、平古場さん…順調にこちらの船に乗っていく…最後に甲斐さんが乗ろうとしたとき
救命ボートは大きく揺れ、甲斐さんがバランスを崩してしまった。
咄嗟に私は甲斐さんの手を掴み、後ろに引っ張り甲斐さんはボートに倒れ込んだ。
前に飛出た私は、勢い余って落ちたのだ。
冷たく、大きく動く水の中に
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作者名：あぽろろろろろ | 作成日時：2021年11月6日 19時
