愛され黒くん (ページ44)

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双眸【青黒】ページ44

｢なんで最近俺のこと避けるんですか。｣

授業が終わり、自分以外の生徒が帰った後

2人きりになった教室。

回収したテストを片手に先生は｢なんの事だよ。｣と

足早に教室を後にしようとする。

先生の目が好きだ。

笑った時にくしゃりと細くなる目。

目が合えば甘く柔らかく弧を描く目。

時に真っ直ぐで何もかも見透かされてしまいそうな

その目が。

そして、それが俺に向かないことが堪らなく嫌いだった。

｢俺、先生が好きです。｣

こちらを向いた先生の顔は酷いくらいに間抜けで、

思わず笑いが漏れてしまう。

｢何笑ってんだ、｣今まで聞いた事ないくらい小さな声で

そう言った先生は頭をガシガシと乱暴に掻いて

教卓に紙の束を置いた。

｢先生も俺のことが好きでしょう？｣
｢だから両思い、です。｣

じわじわと先生の顔が赤くなって

よく熟れた林檎のようになっていく。

あぁ、また間抜けな顔。

｢そんな顔、他の生徒には見せられないですね？｣

｢それじゃあ、また来週。｣

椅子の上に置いていたトートバッグを肩に掛け、

教卓の下で頭を抱える先生を尻目に俺は教室を後にした。

最高の気分だ。

そうやって俺の事だけを見て、

俺の事で頭がいっぱいになればいい。

いつも涼し気な顔をしている先生の

俺だけが知る顔を思い出し、優越感に浸る。

さて、来週はどうやって先生に俺を見てもらおうか。