愛され黒くん (ページ27)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:10,652 hit

. ページ27

｢北斗、好きだよ。｣

手の甲にキスをして

ニコッと王子様のような笑みを見せるきょも。

俺がやってもあぁはならないよ…。

絵になるというかなんというか

映画のワンシーンみたいな。

北斗の顔をちらっと覗くとまたまた真っ赤になっている。

うん、可愛い。

｢お、俺も…好き、だよ。｣
｢で、でもね、俺っ！｣

焦った様子できょもの手を握り返す北斗は

さっき俺達に伝えた時のように少し震えている。

大丈夫、きょもならどんな北斗でも受け入れてくれるよ。

そんなことを考えていると

きょもの口から驚くべき一言が出る。

｢ん、みんなの事が好きなんでしょ。｣

｢っ！何で…｣

｢見てたら分かるよ。｣

そう言って優しく笑って北斗の頭を撫でた。

俺は、少しも気づかなかったのに

きょもは北斗の気持ちに気づいていたんだ。

気づいた上で俺達との約束をしていた、のか。

きっと北斗が自分の気持ちと向き合って悩む時間を

俺達の気持ちだけが先走って奪ってしまわないように

彼は作ろうとしていたんだ。

やっぱり彼には叶わないな。

｢ごめんなさい、｣

｢なんで謝るの。｣
｢北斗の気持ち聞けて嬉しいよ。｣

｢だってこんなの、おかしいじゃん…。｣

｢おかしくな｢おかしいのっ！｣

北斗がきょもの言葉を遮り涙を流しながら叫ぶ。

｢だって、こんなの普通じゃない…｣
｢今まで、俺自分は一途だって思って、た。｣
｢好きな子出来たらその子以外見えないし、｣
｢嫉妬も凄いするし、束縛だって…｣
｢なのに、なのに｣
｢皆が優しくしてくれる度に胸が苦しくて｣
｢誰か一人なんて、決められなくて｣

縋るようにきょもの手を固く握り、

嗚咽を混じえながらも俺達に話そうとしてくれる。

やっぱりさ、違うよ。

北斗は気づいてないんだ。

きょもが来てから

自分がどう言う顔してるか。

捨てないで、嫌わないでって

俺達の前では見せなかった顔してるんだよ。

それは嫌われているって思ってたから？

不仲って、壁を作ってたから？

俺達が気づかなかった北斗の気持ちに

きょもが気づいていたから？

それとも、

俺達に対するそれ、とは違うから？