愛され黒くん (ページ20)

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母がいなくなった日から父は更に酒を飲むようになり、

俺がいようといまいと女を連れ込むようになった。

なんせ顔だけは良かったから

ホイホイ呼んではポイポイ使い捨てのように扱う。

そんな家に帰りたくなくて、

俺は樹の家によくお邪魔していた。

そのうち、俺の家庭環境を知った樹に支えられ

いつの間にか好きになって

いつの間にか愛されて

いつの間にか樹は俺の共犯になっていた。

グサリと刺した。

少し脂肪の着いた腹を二回。

家にあった昨日まで肉やら野菜やらを切っていたそれで

グニャリと歪んだ彼奴の顔は今でも忘れない。

馬乗りになった俺に歯向かおうとする手をまた一突き。

あぁ、この手は俺を厭らしく触ってきた。

そう思うともう片方の手もグサリ。

貫通していたような気がする。

人間こういう時って声出ないんだな。

叫ばれたら困るから良いんだけど

逆らう事も出来ない。

逃げることも出来ない。

そう思っていた其奴は案外あっけなく逝った。

これからどうしようか。

警察に行って、

全て話して、

そうすれば、俺は

俺はまた、自由になれない。

｢ほく…と、｣

聞き慣れた声に振り向くと

家のドアを開けて放心状態で立ち尽くす樹がいた。

｢大丈夫、大丈夫だから｣

｢俺が助けるから｣