ゴースト・キャラメリカ【浦島坂田船】 (ページ5)

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「か、帰さないって……」

「言葉の通りですよ。アンタを元の世界に帰すことはできない。」

「っな、なんでですか！」

ジタバタと暴れようとするが、ギリリと押さえつけられた腕と、彼の太ももとふくらはぎに私の足を挟まれているので、大した抵抗もできなかった。せめてもの思いで睨みつけるが、彼は笑みを全く崩さない。

「いいですか？さっきも言った通りアンタは選ばれたんです、俺たちの救済の光に！その役目くらい果たしてもらわな、こんな屈辱的な思いをずっとしなあかんやん」

「だから！その意味がわかんないんですっば！どうして私があなたの救いになるか分からない！最初から説明してください！」

「ごちゃごちゃうるせェなァ」

私がセンラさんに噛み付いた時だった。
ばさり、と鳥が羽ばたくような音と同時に鼻にかかった特徴的な声が鼓膜を暴力的に揺らした。驚いて声の方を見れば、黒い革靴に黒いスーツの裾……そして、真っ白な羽がちらりと視界に映った。

「どう？復讐の時までソイツはいい玩具になりそうか？」

「えぇうらたん。ちょっと生意気ですが可愛げがあるんでね、いいお人形さんになってくれそうですよ」

「そいつぁ良かった。前の玩具は死んじまったしなぁ、暇する事がなくなりそうで良かった良かった。」

言いながら、その声がゆっくりと近づいてくる。やがてその人は私の顔を覗き込んだ。ふわりと香るのは、死にかけていたあの時に香った優しい香水の匂い。

「ハロー、反抗期のクソガキちゃん。俺の血は美味しかったかぁ？」

その前身真っ黒な服を除けば、その人は天使に見えた。
栗色の髪は真ん中で分けられていて、吊り上がった猫目は新緑を思わせる鮮やかな緑。頬には涙のようなマークが黒く浮かび上がっている。
そして、そのしなやかな背中から見えるのは、真っ白な翼で。

「俺の名前はうらた。お前の最期の日までよろしくね。」