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その温度のない冷たい唇が私の肌を撫ぜる感触にぞわりと腰のあたりが疼く。
そのまま彼は私の指先にまでキスを落とすと、上目でこちらを見遣ってニヤリと笑った。
「っな、っな……！」
「なんですか？もしかしてこうやって男性にアプローチされるのは初めてですか？」
意地悪く笑う彼に私はやっとその手を振り払った。なんなんだこの人……！確かに私は男性経験が極端に少ないし、こうして男性にアプローチされたこともない。しかもこんなイケメンに手のひらだけどキスなんかされたら……照れてしまうに決まってるじゃないか！
「あ、あなた誰なんですか！？いきなり何するんですか……！私を連れてきた人はどこですか！？」
「はは、めちゃくちゃ質問するやんアンタ。僕の名前はセンラ。アンタさんを連れてきたんは別室にいて、何したかって言われたら……挨拶？」
「どこの国の、どんな気障な挨拶ですか……！ここは日本でしょう！？普通にこんにちは！でよかったじゃないですか！」
「ここ日本ちゃうで」
「ッな、え！？」
あっさりと彼……センラさんが明かした事実に思わず面食らう。テンポのいい応酬に楽しげだったセンラさんは更に楽しそうに口元を手袋で覆われた手で隠して笑った。
日本ではない……？？一体どういうことだ？
「つまりアンタは選ばれたんですよ、器に……俺たちの救済の光に。」
「う、つわ……？救済の光……？」
「そう。今日はハロウィンやろ？この日は俺たちにとって大切な日でな？人間界から一人だけ、俺らみたいなモンスターに成る人が選ばれるんですよ。それがたまたまアンタやっただけ。」
「待って！本当に話が見えない……モンスター……？私が選ばれたって……つまり、私は今モンスターに成ったの……？」
「呑み込み早いなぁ、もっと取り乱すもんちゃうん？まぁそうやな……うらたんから聞いたけどアンタは今吸血鬼になったらしいな。」
きゅう、けつき……？
変に冷静な頭は(あぁ、だからあのとき喉が異常なほど乾いていたのか……)と分析まで始めてしまう。
いや、これはただの現実逃避だ。だって、だって、人間じゃなくなってしまうなんて……
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作者名：くらげ。 | 作成日時：2021年11月5日 14時
