夢の魔法【梅原裕一郎】 (ページ48)

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それ以上の癒しページ48

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アフレコが終わってスマホを見たらAから『破水したから病院行く』と連絡が来ていて急いで電話をした。

「大丈夫？今どんな感じ？」
『さっきまで痛かったけど、今は大丈夫…このあとラジオだっけ、頑張って』
「ごめん行けなくて」
『いいよいいよ。結構ひどい顔してるの見られたくないし…あっ、痛いごめん切る！』

電話を切られて、呆然としてしまった。無力すぎる自分に腹も立った。
とりあえずラジオの現場に向かって平然を装う。

ソワソワしてるし、早く病院に行きたい。なんで働いてんだ自分。
出産を経験してる姉に立ち会いした方がいいよな、って話をしたら「稼ぎ頭なんだから仕事の時は仕事に集中したほうがいいと思う」と言われた。Aにも同じことを言われた。

2本とも無事に録り終えて外に出たら「まだだよ」と姉から来ていた。
急いでタクシーに乗って向かって病院に着いた。

「梅原さんですか」
「そうです、妻は」
「もうすぐ生まれそうです。奥さん頑張ってるのでここでお待ちくださいね」
「ありがとうございます」

分娩室には姉が立ち会っていて外で待つことしか出来ない。ただ無事を祈る。
もうすぐだと言われたのに、出てきたのはもっと長く感じた。

医者が出入りする、バタバタとザワついた音の中に元気に泣く産声がハッキリ聞こえてきた。

「おめでとうございます〜、元気な女の子ですよ」
『ゆういちろ、』
「A…」

Aがいるベッドに一緒に寝ている小さな命。やっと会えた。安心して涙が溢れているAの手を握った。

「ありがとう、お疲れ様。頑張ったな」
『うん…ありがとう待っててくれて』

隣に寝ている娘の手に指を置いたら、きゅっと優しく、力強く握ってくれた。

「生きてる…可愛い」
『ふふ、なにその反応』
「可愛いな、ほんと」

触れ合いもそこそこにAの病室へ行った。

「裕一郎頑張るんだよ、Aちゃんのこと支えてね」
「うん、ありがとう。Aと一緒にいてくれて」
「私も力入っちゃった。じゃあね」

姉が帰って、病室で家族3人の時間が出来た。

『やっとだ…やっと終わった…』
「長い間ありがとう、本当にお疲れ様」
『ぎゅーしたい』
「ん、」
『うう…癒される…あ、まってこっちにも癒しがいる可愛い』

ふぇ…と声をあげた娘の方を見て腕の中からすり抜けたA。若干寂しいと思ってしまったが、それ以上に娘が可愛くてたまらない。