自分の尻は自分で ページ41
.
.
病気から復帰して一年程経った。Aと付き合って10年目以上経つけど、今までで一番の困難があったと思うし、あんなに離れた期間は無かった。Aがいてくれる有り難さが身に染みて分かった。
『ねえ裕一郎、ティッシュ取って』
「はいはい」
『いてっ!箱の角刺さった!』
俺がそう考えてるとかつゆ知らず、呑気にお菓子を食べながらテレビを見ているAにローテーブルの上で箱ティッシュをスライドさせて渡した。何も考えていないんだろうか。
「おい、ちょっと」
『なに?あ、裕一郎も食べる?あーん』
「あー…」
『ん、えへへ。可愛い』
お前が一番可愛いよ。気付けよ。
お菓子を取る手を握ってみたら、少し驚いた顔をして握り返してくれた。
『どしたの、なんかあった?』
「何もないけど」
『ほんと?何か隠してる?』
「隠してない」
『ふーん。そっか』
そう言って反対の手でお菓子を食べ始めた。どんだけ食えば気が済むんだ。そっちの手も握ってやった。
『食べられない…』
「ちょっと聞いてほしいんだけど」
『なに…怖い』
「Aって結婚とか考えたことある?」
『結婚?んー、あるけど…?』
「したいなって思ったことは?俺はあるよ」
『わ、私も…裕一郎が入院したときにより一層思ったかなぁ』
思ってたことは一緒だったらしい。もはや言葉も必要ないかもしれないけど。
「俺と結婚してください」
『こんな私で良ければ、お願いします…』
「口にお菓子のカス付けてるAがいいんだよ俺は」
『なっ…!私だって家の中で平気で全裸になる裕一郎がいいの』
「家の中ならいいでしょ、外じゃないだけ」
『外ではダメに決まってるでしょ!』
「あー、押し倒したい」
『急に!?』
ローテーブルを押し退けて、そのままAを後ろにゆっくり倒した。
別の日、事務所に行く用事がお互いあったからマネージャーにAと結婚したい、結婚するという事を伝えたら事務所内がザワついた。
結論から言うと、事務所はあんまり今のタイミングでは結婚して欲しくないらしい。ずっと付き合ってるということをラジオとかの媒体で散々言ってきてるのに、なぜ今ここで反対されないといけないのか。
反対されたら反抗したくなる。
「俺もう決めたんで何言われてもAと結婚します。じゃ、お疲れ様でした」
マネージャーは頭を抱えていたけど、抱えたいのはこっちの方だ。常識が無いと思われたとしても、これが自分の幸せならそれを貫き通したいと思った。
432人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男性声優」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
N(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読ませていただいてます。次回作も楽しみにしてます!! (2021年5月24日 0時) (レス) id: 8ca26ff974 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:p@n@ | 作成日時:2021年5月4日 0時