夢のはじまり ページ2
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「俺声優なるわ」
『え!?』
バイトからの帰りに電話してた時に言われた。これから入れ違いで彼は夜勤だ。
『急にどうしたの?』
「さっき映画見てて思ったんだよね」
『いや課題しなよ、てか浪人中も言ってたよね』
「うん。なんか今改めて思った」
『ふーん。そっか』
高校の入学式で前の席だった彼に一目惚れした。プリントを受け取る時に、思い切って手を握ったら「なんだこいつ」と言いたそうな目で私を見ていたこと昨日のように覚えている。
「夜勤終わったら連絡する」
『それ朝じゃん』
「Aだって学校だろ」
『早すぎるよ、裕一郎が寝る時に電話して。あれ、学校は?』
「明日昼からなんだよ」
『そうなんだ。頑張ってね』
話もそこそこに店に着いたらしい。私も家に着いて電話を切った。
声優になるっていきなりどうしたんだろう。そういえば一緒に映画を観てる時「この人の声好き」とか色々言ってた。
『お母さん、裕一郎がさ、声優になるって』
「あら、どうしたの急に。そういえばAも小さい頃そんなこと言ってたね」
『ほんと?そうだっけ?』
「うん。おジャ魔女どれみ見て言ってたよ」
『あー、なんか思い出したかも。空飛びたいって』
「そうそう。お母さんは素敵な夢だなぁって思ったよ」
『…ふーん』
自分の部屋のベッドにダイブして色々考えてみた。
私は今大学三年生で、裕一郎は浪人したから本当は同い年だけど二年生。人生の事を考えるには今がチャンスなのかもしれない。
次の日、電話に気付いて起きたときはその話はしなかった。お互い学校が終わってバイトが同じシフトに入ってたからその時に話をした。
「とりあえずなんか申し込んだらいいかなと思って考えてる」
『色々見てるんだね』
「うん。一応」
『小さいアニメ見てて女の子がほうきで空飛んでたのに憧れてたんだけどさ、それ思い出しちゃった』
「可愛い夢だな」
『でしょ。その時お母さんにね、声優さんは空飛ぶことあるよ的なこと言われてね。私も申し込みだけしてみようかな』
「いいじゃん」
てっきり否定か何かされると思ったから意外な返事だった。
申し込んで数日後、一次審査に通過した。そのことを裕一郎に話したら「そんなの無かったぞ」と言われた。お互い違和感を感じて取り寄せた資料を見せあったら見事に違う物だった。
頭が追いついてないまま二次審査も通過し、最終選考に残り、賞を受賞した。同じ時期に裕一郎も養成所に入所が決まった。
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N(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読ませていただいてます。次回作も楽しみにしてます!! (2021年5月24日 0時) (レス) id: 8ca26ff974 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:p@n@ | 作成日時:2021年5月4日 0時