39 ページ39
.
くろちゃんがきたのだろうか、と扉の方を向けばなんとも言えない表情の内村がそこに立っている。
なんだ内村か、くろちゃんならいないよと力なく声をかければくろちゃんに用事ねぇしと否定される。
じゃあ何しに来たって言うんだこいつは、と内心思ったが突っかかる元気もなくそう、ほ呟いた。
う「俺が用があるのはお前だよ及川。」
一生聞くことは無いと思っていたセリフに思わず目を見開く。
体調が悪いのも忘れてついいつも通り内村に問いかける。
「え、どうした？私に用があるとか。頭打った？」
それを聞き対してなかった表情がむっと歪む。
それ本気で言ってる？頭うったのはお前だろと返され本気で訳が分からなくなる。
いつまで悲劇のヒロインぶってる訳？といつものヘラヘラしてる内村からは考えられないほどきつい一言が飛んでくる。
う「お前いい加減にしたら？どれだけ周りを振り回せば気が済むの？」
グサッと刺さる一言をヘラっとした顔ではなく珍しく真剣な顔で彼から投げかけられる未来なんて想定すらしてなかった。
う「付き合えても一生お前のこと幸せにしてあげられないって落ち込んでる黒ちゃんもずっと大事にしててようやく行動に移し始めたのに突き放された湧も、もっとお前の気持ち考えてあげればよかったって毎日泣いてなのに話も聞いて貰えない黒宮も既読すらつかないのに毎日必死にLINE送ってる七瀬ちゃんも、それ以外にもみんな振り回してること気づけよ。」
口を挟むまもなくツラツラと内村の口から出てくるトゲトゲとした発言にいつも通りなにか言い返したいとおもってもつい言葉が詰まる。
世にも珍しく内村が正論を言っているのだ、言い返す言葉も出てこない。
お前だけがしんどいんじゃないから、とそっぽ向きながらぶっきらぼうにいう内村。
『……なに、内村ももしかして心配なんてしてくれちゃったりしたの？』
思わずこぼれた一言には！？んな訳ねーじゃん！と噛み付く内村は心做しか耳が赤い。
ああ、私の周りはどうしてこんなに暖かいんだろうか。
凍りついていた心をとかされた気持ちだった。
悲劇のヒロインに自分を追い込んでいたのは紛れもなく私だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 832人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「少年忍者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふーか - めっちゃかっこいい！湧くんしんどい！！可愛いわんこ黒ちゃんもいいけどSの黒ちゃんも最高です！ほんとに、キュンキュンします！更新待ってます！！！！ (2021年6月2日 22時) (
レス) id: c4a626600f (このIDを非表示/違反報告)
あーり - トキメキすぎてやばいです！早く続きが楽しみです！ (2021年4月28日 17時) (レス) id: 085671985e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑 | 作成日時：2021年4月26日 1時
