第三話 ページ3
「陣平ありがとう、でもいいよ！楽しんで」
会計を済ませ居酒屋を後にした
本当は会いたいとか寂しいとか、
素直になるべきなんだろうけど
彼の仕事上そんなこと言えるわけがない
迷惑はかけたくないのだ
「まぁ付き合えてるだけでも、幸せ…か…」
欲は言わない！
彼が無事ならそれでいいのだ
外の風にあたると
さっきの怒りはどこへやら
気にするのすらめんどくさい
いつものBARで少し飲んでから帰るか
会いたい気持ちは収まらないまま
馴染みのBARまでの階段を登る
いや、登ろうとしたら
誰かが走ってくる音が聞こえた
「A！！！」
彼の声が聞こえるだけで
心がきゅっとなる
あー好きなんだなぁと切なくなる
「………………零……」
「…ごめん」
「久しぶり、零！どうしたの？急に謝るなんて怖い」
アルコールが回ってるからなのか
少し泣きそうになる
だが私はそんなキャラでもなければ
めんどくさい女にもなりたくない
だから笑顔を向ける
あぁ、怪我はしつつも
元気そうでよかった
「松田がさっきまでAがいたって言うから…連絡もせずにすまない」
「いいよー、それよりも早く戻りなよ？久々にみんな集まれたんでしょ！時間が勿体無い！」
早く戻れと言わんばかりに
彼の背中をぐいぐいと押す
あー抱きつきたいな
この広い背中に
お仕事お疲れ様、無理しないで、無事でよかった
色々言いたいのに
私は全く素直じゃない
「…あとで家に行く」
「りょーかい」
来てくれるのか、なんて
一喜一憂してしまう
ならばBARに行かず大人しく帰るか
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作者名：Rikotaro | 作成日時：2019年9月16日 23時
