三話 ページ3
「A。ケーキ持って来たから食おーぜ」
「ケーキ？サンジのケーキ大好きだから嬉しい」
「…そーかよ」
顔を赤く染めるサンジに思わず吹き出す。ギロリと睨まれて慌てて立ち上がった。…あ、リビングには今兄さんとローさんが居るんだった。
「ちょっと待ってて。フォークと飲み物取ってくる」
「俺も行くよ。お前じゃ零しそうだしな」
「殴るよ」
二人でリビングに入ると思った以上にそこは静かだった。兄さんはソファで寝ていてローさんは真剣な表情で分厚い本を読んでいる。サンジをチラリと見るとローさんのことを知っているようでびっくりしていた。
「あれ一つ上のトラファルガーだろ」
「知ってるの？」
「アイツすげえ女にモテる」
「ふは、サンジとは違って女の子のほうから寄ってくるんだね」
「てめー犯す」
「ひゃっ、ちょ、変な触り方しないでよ！変態！」
いやらしい手付きで腰を掴むサンジの頭をかなりの力で殴る。ナミじゃなかっただけ有難いと思ってよね。ナミだったら殺されてたよサンジ。そう言うとナミさんにする訳ねーだろ！と返されてムッとした。
「なんでナミにはしないのに私にはする訳！」
「…ぐ。ナミさんはもうそういう対象じゃねーの！ナミさんは女神なんだよ！」
「意味分かんない」
「分からなくて結構だ。おら、コップ出せ」
仕方なくコップをサンジに渡してリビングに目を向ける。…ローさん、凄い真剣だなぁ。さっきの私をからかってた時とは大違い。思わずじっと眺めていると目があって慌てて下を向いた。ローさんはそんな私にくく、と小さく笑って視線をサンジに流す。
「…彼氏か？」
「サンジなんて論外です！」
「…鈍感なんだな。お前」
「鈍感？なん、ひゃ！」
「…A、行くぞ。コイツは鈍感でいんすよ先輩」
ローさんを睨んでから私の手を掴むサンジに困惑する。なに怒ってんだろ。ローさんを見ると呆れた様な顔をしていた。私はサンジの手を引っ張って止める。
「サンジ。ローさんに勉強教えて貰おうよ。兄さんも寝てるし」
「はあ！？なんでコイツに」
「だって折角ローさん遊びに来てくれたのに本読んでるだけなんてつまらないじゃない。…ローさん、勉強教えて貰ってもいいですか？」
ローさんも少し驚いた様な顔をしている。意外なその表情にふふ、と声を漏らすとハッとした様子で本を閉じた。
「…言っとくが俺はスパルタだぞ」
サンジがうえ、と嫌そうな声を出したので私は今度こそ我慢出来ずに声を出して笑ってしまった。
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作者名：マピト | 作成日時：2020年9月21日 20時
