「兄さん、この人苦手です」【ONE PIECE】 (ページ1)

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一話ページ1

「兄さん、おかえりなさ…」

「あー…連絡すんの忘れちまったが、ダチ連れてきた。外土砂降りだから濡れちまったんだと」

そう言った兄さんの後ろで、濡れた男の人がぺこりと軽く頭を下げた。私は慌ててタオルを持って来てその男の人に手渡す。助かる、と低い声で言われていいえ、と返した。…兄さん、事後報告するのは辞めてっていつも言ってるのに。

「もう、前もそれでルフィさん連れて来てびっくりしたじゃない。…あ、私は妹のAです。いつも兄がお世話になってます」

「…トラファルガー・ローだ。今日は世話になる」

不機嫌そうな顔をしているローさんはお世辞にもあまり好青年には見えなかった。耳にはピアスが付いていて目の下には不健康そうなクマがある。それでもスタイルと顔は俳優並みで、何故兄さんの友達はこうも美形が多いのだろうと少し不思議に思った。

　

「ゆっくりしていって下さい。ローさんは今日泊まっていかれるんですか？」

「………、」

「…ローさん？」

何か変なことを言ってしまったのだろうか。固まるローさんに兄さんが吹き出した。慌てる私にローさんが眉を寄せる。…う、ちょっと怖い。

「こいつ、学校ではトラ男って呼ばれてんだよ。…なあ、トラ男」

「うるせえ。…ローでいい。間違ってもトラ男だなんて呼ぶなよ、ゾロ屋の妹」

「…私の名前はAです。ちゃんと呼んで下さい。トラ男さん」

さっき名前を紹介したのに、結構失礼な人だ、と思いながら敢えてそう言うとローさんはさっきよりも眉を寄せてこちらを睨んできた。ふん、ちゃんと名前を呼ばないそっちが悪いんだから。…あと兄さん、笑ってるの見えてるからね。

「…生意気なガキだな」

「な、貴方と一個しか変わらないです！」

「それでも先輩だろ。おら、可愛らしく謝ってみろよ。今なら許してやる」

「…兄さん、この人私きらい！」

「だとよ。おら、もういいだろ。トラ男もあんま俺の妹虐めんじゃねえよ」

「あ？俺に命令するな。…A。これでいいだろ」

「……どーぞ、トラ男さん」

「…ふ、ガキだな」

…僅か出会って十分。私はその短時間の間で、この男の人は意地悪だと確信した。…兄さん、この人苦手です。