来訪者 ページ15
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8:45 私室
Aは朝食を済ませ、シャワーを浴びていた。
帰省日は必ず朝の身支度の前にシャワーを浴びることがお決まりだった。
久遠Aは身を清めることができるなら、石鹸にはこだわらない。
唯一、去年の交流会のあと京都校の西宮桃に勧められた甘い香りのシャンプーを気に入って使っていた。
浴室内と部屋の温度の差に身震いし、脱衣所に着替えを用意していなかったことに気づく。
『...。』
脱衣所から部屋へ移動し、クローゼットから着替えを用意する。
ふと玄関から人の気配を感じ、顔を向ける。
ゆっくりドアノブが回り、開いたドアから見慣れた黒服の男が侵入してくることを確認する。
『どうして勝手に入ってくるんですか?』
冷静な声の主に対して、侵入者は金魚のように口をぱくぱくさせていた。
「な、えっ、ちょっと!なんでそんな格好してんだよ!」
勝手に入って来た人間に怒鳴られる理由がわからない。
『ここは私の部屋ですから。』
そう告げると侵入者は即座に踵を返して部屋の外に出て行った。
ドアの向こうから独り言のような声が聞こえるが、何を言っているのか聞き取ることはできない
「女子なら、裸体を見られたに等しいのだから、もう少し恥じらうべきではないか?」
呆れた声の言っていることを理解するのに時間は必要なかった。
肌寒さを感じていた肌が一気に熱くなり、手の中にじんわりと汗を感じる。
自分が布一枚だということよりも、五条悟が部屋に入ってきたことが
頭の中で優先的に処理されたらしい。
緊張と羞恥を落ち着かせながら無言で実家用の服に袖を通し、濡れた髪にドライヤーを当てる。
誰のためでもないが「女子の常識」と教わった化粧のつもりで、
黄みをふくんだ淡い赤色の口紅を唇に薄く引いた。
これだけで顔色が格段によく見えるのだから、化粧をする重要さがわかる。
身支度も整い、荷物をまとめ玄関を出ると、五条が腕組みをして立っていた。
無駄に長い脚を持て余しながら、何か不服そうな表情をしている。
『先生。』
「ああいうときはドアの鍵くらいかけときなよ...入ってきたのが僕でよかったね。」
『どういう意味ですか?』
この女は男のことを何もわかっていないのだと五条は眉間にしわを寄せた。
「先生として、男として忠告させてもらうけど――」
五条悟による説教が始まる。
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おかだ - 読み応えあって好きです、更新楽しみにしています! (2021年3月1日 16時) (レス) id: 823cf7df74 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず生姜 - うわぁぁぁぁぁどんな展開になるのか気になります!!更新頑張ってください!!楽しみに待ってます!! (2021年1月4日 20時) (レス) id: 36f1074087 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:安井 | 作成日時:2021年1月3日 20時