頭痛薬 ページ14
五条side
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「ん...頭、いた...。」
昨晩カーテンを閉め忘れた窓から差し込む光が目に痛い。
確か、酔いつぶれて寝て、七海がタクシー呼んでくれてそれから...
シャワーも浴びずにベッドに倒れたんだったっけ
「風呂入ろ。」
五条悟はいつも同じ石鹸を使っていた。
女は匂いの変化に敏感だから、余計ないざこざを起こさないために
徹底して身の回りは「いつもと変わらない」よう努めていた。
硝子と七海に酒を絡めて駄弁るのはもう何度目かわからない。
アイツを「呪術師の生徒」として面倒を見ると決めたのは自分自身なのに
変なわだかまりを膨らませているのは何故なんだ?
18歳になったAを久遠の家から呼び寄せた時、本人だと一見では判断できなかった。
気まぐれで約束を交わしたあの日の少女は、すっかり女性になっていたのだ。
星を含ませていた瞳は曇ってしまっていたが、静かな海の色の穏やかな温かさを閉じ込めていて
変わっていない部分もあるのだとほっとしたことを覚えている。
約10年、自分自身にも多すぎる出来事があった。
それは彼女も同じだったのかもしれない。
記憶に残るAよりも無口で、時折見せる自傷気味の表情と、僕が引率した任務の後の出来事は僕に一抹の焦燥感を募らせるのに十分な素材だった。
娯楽も知らず、家に縛られ続けた彼女にいったい何がしてやれるのだろうか。
恐れ、崇められた僕は学生時代を経て変わることができた。
だから彼女もきっと...もう少し、人の愛を知ることができたなら。
下級生ができてから人と接する能力がついて少しずつ笑顔を見せることが増えた。
だけど幼稚な願いは空しく、彼女の態度が変わることはなかった。
こんなの恩着せがましくて、自分勝手だと分かっているけれど
「こんなにしているのに自分は拒絶されている」と思ってしまった僕は
気づけば彼女に対して、憎らしいだなんて口からこぼしそうになるのを我慢するようになっていた。
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「今何時だ...?」
スマホの表示は8:16、今日は授業はないし非番で任務もない。
そういえばAの帰省日だったな。
なーんか嫌な予感がするんだよね。
「ま、仕事があったってことにしておくか。」
滅多に飲まない頭痛薬を口に放り込み、水と一緒に一気に飲み込むと家を出た。
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カラスの羽
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おかだ - 読み応えあって好きです、更新楽しみにしています! (2021年3月1日 16時) (レス) id: 823cf7df74 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず生姜 - うわぁぁぁぁぁどんな展開になるのか気になります!!更新頑張ってください!!楽しみに待ってます!! (2021年1月4日 20時) (レス) id: 36f1074087 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:安井 | 作成日時:2021年1月3日 20時