【APヘタリア】私、悪魔と契約結んでます。【悪魔注意】

Phenex 2 ページ33

「あ、アーサーさん。また駄目だったのですか」
雲に少し覆われた三日月の下に、艶やかな黒髪の悪魔が姿を現した。
「ああ、おかえりキク。くそ、あの髭にもランにも術をかけてもらったのにキスして2分くらいしか持たねえ」
「道のりは長いですねえ」
くす、とキクが笑う。

「なあキク。…お前、どこ行ってた？」
アーサーの赤い眼が鋭くキクを捉える。
「何処と言いましても…近所をふらふらと」
「天界の匂いがする」
キクは顔色一つ変えずに笑いながら、淡々と返答した。
「嫌だなあ、アーサーさんてば。たった1日で天界になど行けるわけないじゃないですか。
しかも地上から」
「…。第1級悪魔はできる」
「どうしたんです急に。アーサーさん、欲求不満で少し頭がオーバーヒートしているのでは？」
「お前」
アーサーがキクの襟首をつかむ。
「第1級悪魔に昇格しただろ」

「…ええ。しましたよ」


アーサーはやっぱりな、と呟いた。
「…どうやった」
「どう、とは言いましても。急に知らせが来まして」
「俺もお前もいくら強力な魔力を持っていたとしても、豊富な知識を持っていたとしても、絶対に第1級には上がれねえ。

…第1級がそれを取り決めているからだ。」
「つまり何が言いたいのです、アーサーさん。
方法を教えてくれと言われましても、さっき言ったように知らせが来ただけで私には分かり兼ねます」
アーサーは舌打ちをしキクを突き飛ばすと、
「いい、お前はどうせ言わねえからな。」
「アーサーさん、
…私は貴方の''敵''ではありませんよ？」
「相変わらず曖昧な言い方をするんだな」
ここで追求しても効果はない。
むしろ、これからじっくり探していく方がいい。
何よりアーサーは、第1級となった悪魔にAを奪われることを恐れていた。
自分より位の上の悪魔ならば、それが可能だからだ。
今は、下手に出るしかない。
アーサーはAと一緒に寝るつもりなのか、Aの寝ている部屋に入っていった。

「私は貴方の敵になるつもりはありません。
…貴方は私とよく似ていますから」
そう、キクが静かに笑ってデッキから自分の部屋に戻ろうとした所だった。

「キク！！」

「こ、この声は…」
「第1級昇格した聞いたある！！
にーに、本当に嬉しいあるよ〜！」
「ふ、フェニクス…さん」

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