その手を離したくない

１０．謝罪と苦労と人数不足と ページ10

すみません。本当にすみませんでした。確かにあの人は生徒会長さんでしたよ。アーサー…って言ったっけ。私達と同じ、今年度入学してきたピカピカの１年生なのに生徒会長ってどういう事。顔だけで選んでるだろ、とツッコミを入れたくなる。

でも、同じクラスの香君に聞いてみると昔は不良だったらしい。海賊船でブイブイ言わせてたって。やっぱり問題児だったんじゃないか。でもまたこんな事を言うと、今度はおでこを突きつけられて眉毛でじょりじょり擦られそうだから心の中に秘めておくよ。

「あ、A。昨日言ってた事、ちゃんと覚えている的な？」

そして今私に話しかけてきたのはその香君。今までの長い間、アーサー君の領土にされていたらしい。そのせいか、アーサー君とお揃いの太い眉…嗚呼、悲惨だ。クニの方々はやっぱり大変な事が多いんだね。

「うん、調理実習だよね。アーサー君達のクラスも受けてたやつ」

「それそれ。自分の家の料理を作れっていうの、ぶっちゃけめちゃめちゃ面倒なやつ。それで、Aはどうすんの的な？」

「ああ、私は菊さんの家の料理を作ることにしたよ」

グループや班に分かれる時も、欧羅巴とか亜細亜とかで分けられる事が多いから、こういう時クニじゃない私は何かと不便だ。そういう時はとりあえず、菊さんと一緒に行動することにしてる。今日の調理実習は席毎で班になっての授業なので正直ほっとした。

「せやせやお二人さん。早う家庭科室に集まれ言うとったやん、一緒行こ！」

そう、私達の肩をぽんと叩いて割って入ってきたのは同じ班のベルベルちゃん。女の子という事もあってか、結構話しやすい。二人は私の後ろの席だ。そして班の人数は４人。私の席隣の人がまだ来ていない。また寝坊なのだろうか。まったく無責任な人だ。溜息を吐いて口を開いた。

「香君、ベルベルちゃん…、ロヴィーノ君がまだ来てません」

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