8.いつもと違う朝 ページ8
「あれ、今日は随分とお早いのですね」
目が覚め、寝巻き姿で襖を開けると朝ご飯が湯気を立てて並んでいた。いつもならこの時間はまだ、コトコトと音を立てて作っているはずなのに。そう言うと割烹着姿の菊さんは、振り向いて微笑んだ。
「はい、今日は朝から集会がありますからね。聞いてませんでした?」
コト、と静かな音を立ててよそっていたご飯を机に置く。昨日はあの後、先生が何も知らずに例のスコーンを食べてしまってお腹を壊してしまったので何も聞いていない。それどころか今日の先生の出勤の有無の方が心配なんだけれども…。
「何も聞いていませんでした…」
「そうですか。今日は全校生徒が体育館にあつまって話を聞くのですよ。ですから遅刻してはいけないと思い、こうやって早く準備したのです。準備が整いましたのでAも席に着いてください」
そう促され、私も菊さんの向かい側に座る。いつも余裕を持って学園に着ける程早いのだから、こんなに早めに準備しなくても良いのではないか。
そう思ったけれど、菊さんは昔から心配性な方だ。恥をかくのが何よりも嫌っている菊さんにとっては、少しでも早い方が安心なのだろう。
「それは楽しみですね。何より知らない人と大勢会えるのですよね。会った事のない人に会うことはこの上ない幸せですよ!」
「そうですね。私もお恥ずかしい事ながら、全校生徒の中では顔も知らない人もいるので実に楽しみです」
そう言い、二人でくすくす笑う。隣で準備を手伝っていた大阪さんは、集会って本当は面倒なものなんじゃ…と呟いていたが、聞こえなかったふりをした。
知らない人に会って、その人の個性や性格を知って。そして、また新たな世界が広がる。私はそれが楽しみで仕方ないのだ。
14人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるりん(?・ω・)(プロフ) - 薺さん» 貴重なご意見、ありがとうございます…!まず人種が違いますから、合併なんかも出来ないですし本当に愛し合っていないと結ばれないんじゃないかな、と考えると止まらなくて!拙い文章ですが、頑張らせて頂きます! (2017年3月31日 12時) (レス) id: 405f58ad2d (このIDを非表示/違反報告)
薺 - はじめまして!最後まで一気読みしちゃいました!ヒトとクニの切ない描写がなんかたまりません…!更新頑張ってください! (2017年3月29日 20時) (レス) id: 8d03f80a9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:くるりん(✿・ω・) | 作成日時:2017年3月12日 0時