36.真実の有無 ページ36
「ただいま、菊さんー?」
「A!」
見慣れた家の扉を開き、そう言うと廟で菊さんが飛んできた。今はどうでもいいが、うちは今じゃあまり見ない横の取っ手を引くことで開く扉で、歴史を感じさせる。いつもはちゃんと着替えてから出る菊さんだが、今日はよほど焦っていたようで割烹着姿のままだった。パタパタとスリッパを走らせる音が響く。
「こんな時間まで何してたんですか!私、ずっと心配でご夕飯も喉を通らなくて…!てっきり誰かに連れ去られたんじゃないかと…」
「わわわ、菊さん落ち着いて」
「こんな状況で落ち着ける訳ないじゃありませんか!」
いつも大声を出さない菊さんのことだ、よっぽど心配していたのだろう。申し訳なく思う。あれ、でも何か忘れているような気がする。
「菊さんだって、今日は新聞部の活動で遅くなったんですよね。おあいこですよ!」
そう言うと、彼は一瞬ぽかんとした表情をしてみせた。フェリシアーノ君から聞いたから確実だと思うが、何かいけなかった事でも言っただろうか。首を傾げていると、菊さんは私の肩をがっしりと掴んだ。
「何言っているんですか!今日は新聞部の活動はお休みだったんですよ。だから私は早く帰って、今日は美味しいもの沢山作ろうと張り切って…」
は?今度は私の頭にはてなマークが浮かんだ。話が飲み込めなかった。菊さんは嘘をつかない。私も疑うつもりも無いし、菊さんの言うことは正しいとずっと思ってきた。じゃあ、フェリシアーノ君の言っていた事は…?そう思うと頭がこんがらかってショートしそうになった。今日はちょっと考えすぎたのかもしれない。
菊さんの説教を生半可な思いでほとんどを聞き流し、中空を見つめる。彼が怒ると怖いと言うことも知っている。そして新聞部はお休みで、私がこんな時間に帰ってきて心配をかけた事も分け隔てのない事実だって。
フェリシアーノ君の言った事が嘘だったのか、という議題で脳内会議が行われているがもう今日はこれ以上考えるのは辞めよう。なんて言ったって、お腹がすいている。
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←35.彼との距離は
14人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるりん(?・ω・)(プロフ) - 薺さん» 貴重なご意見、ありがとうございます…!まず人種が違いますから、合併なんかも出来ないですし本当に愛し合っていないと結ばれないんじゃないかな、と考えると止まらなくて!拙い文章ですが、頑張らせて頂きます! (2017年3月31日 12時) (レス) id: 405f58ad2d (このIDを非表示/違反報告)
薺 - はじめまして!最後まで一気読みしちゃいました!ヒトとクニの切ない描写がなんかたまりません…!更新頑張ってください! (2017年3月29日 20時) (レス) id: 8d03f80a9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:くるりん(✿・ω・) | 作成日時:2017年3月12日 0時