34.世界が明るく ページ34
見覚えのある茶髪にくせ毛。フラフラとした情けない歩き方。確信してしまった。思わず反射的に足が速まっていた。何でこんな時間に。そんな事はこの際どうでもよかった。待っていてくれているという嬉しさが、ほとんどを占めていたから。
「ロヴィーノ君っ…!」
「……え?」
声をかけた途端に転けそうになった。いや、正確にはその人の前で盛大に転けた。しゃがみ込むロヴィーノ君であろう人。窓の光が反射して、顔が良く見えなかった。
「いたた……」
「大丈夫?Aちゃん」
そんな言葉をかけられた時に、思わず違和感を覚えた。失礼な事だけれど、ロヴィーノ君ってこんなに優しかったっけ。それに私の事をちゃん付けで呼ぶ。ごめん、想像しただけで寒気がした。よく見るとアホ毛の位置が逆な気がしないでもないかも…?もしかして、と嫌な予感に襲われその人の名前を問う。
「え……フェリシアーノ君…?」
「そうだよー」
暗闇に目が慣れてきて、改めてその人の顔を見てみると確かにロヴィーノ君の弟のフェリシアーノ君だった。数分前に確信した自分が恥ずかしい。だが相手は期待させてごめんね、兄ちゃんじゃないよとへらへら笑っている。器広すぎ…!
「ごめんね、フェリシアーノ君…」
「ううん。それよりAちゃんが俺の事覚えていてくれてただけでも嬉しいよー!結構脈ありかもね!」
またまたーと冗談で受け流し、こんな時間にいる事を問うてみた。聞くと彼の所属している部活、新聞部が長引いてしまっていたらしい。そこで菊さんも同じ部活だったことに気づく。もしかしたら菊さんもまだ近くにいるのかもしれない。出来るだけ心配を掛けたくないので、ありがたい。
「そういえばAちゃん。兄ちゃん探してたんだっけ?」
「あっ。ううん、良いの。こんな時間に、もういないと思うし」
「兄ちゃんならずっと校門の方で待ってたよ」
フェリシアーノ君が、半ば私の言葉を遮るようにして言う。それを聞いた瞬間、またさっきみたいに高鳴った。嘘?嘘でしょ。もうこんな時間なのに、約束覚えていたの。そんな気持ちが頭の中を占拠してぐるぐる回っていく。その時、フェリシアーノ君に背中を押された。
「行ってきなよ、兄ちゃんの所に」
驚いて振り向くと、そこには雲一つ掛かっていない満面の笑みがあった。思わず泣きそうになる。嗚呼、三回目。皆が優しすぎるのが悪い。そう思いつつ、私は校門に向かって走った。
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くるりん(?・ω・)(プロフ) - 薺さん» 貴重なご意見、ありがとうございます…!まず人種が違いますから、合併なんかも出来ないですし本当に愛し合っていないと結ばれないんじゃないかな、と考えると止まらなくて!拙い文章ですが、頑張らせて頂きます! (2017年3月31日 12時) (レス) id: 405f58ad2d (このIDを非表示/違反報告)
薺 - はじめまして!最後まで一気読みしちゃいました!ヒトとクニの切ない描写がなんかたまりません…!更新頑張ってください! (2017年3月29日 20時) (レス) id: 8d03f80a9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるりん(✿・ω・) | 作成日時:2017年3月12日 0時