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29.今の自分 ページ29

「ありがとう」

隣にいる彼にいきなりそんな事を言われ、慌てて振り向く。休み時間はそろそろ終わりに差し掛かっていた。

「そんな。私は何もしていないのに」
「いや、お前は俺の閉ざしていた心を開いてくれた。話を聞いてくれて、一緒に泣いてくれた。俺のこの気持ちに気づいたのも、お前だけだったしな」

そう言うとギルベルト君はにっ、と微笑んだ。その笑みは何の曇りもない、清々しい程に晴れ渡った笑みだった。私の方こそ、彼よりも深刻じゃないけれど同じような境遇のヒトに会えて嬉しかった。こっちが感謝したいものだ。

「今はそういう…ストレスとか、大丈夫なの?」
「ああ。消滅したんだ、俺のクニ」
「えっ?」

一瞬聞き間違いかと思った。自慢ではないが、私は世界史にあまり詳しくない。確かにギルベルト君のクニは地図上には載っていなかった。だがまさか消滅したクニがあったとは。まずい事聞いちゃったかな。彼にどのような言葉を掛けようか迷っていると、それよりも先に口が開かれた。

「でも大丈夫だ。俺の熱意を、思いを弟がちゃんと引き継いでくれている。誇りに思ってくれている。それだけでも充分だ。俺様の偉人伝はちゃんと後世にも残されるだろうしな。寧ろ、これで良かったんだ。昔は忙しくて出来なかった事も、今では腐る程出来る。ゲームも極めてるんだぜ、すごいだろ」

良かった。落ち込むどころか今の自分を楽しんでいるようだ。彼の自慢げな横顔を眺めていると、これまでに無い達成感が感じられた。

もしかして、私がここにいて、この学園にいて嬉しく思うヒトがいるのかもしれない。私の存在意義がこの学園にあるかもしれない。私にも出来ることが、あるのかもしれない。
クニとヒトとの関わり、そしてクニだらけのこの学園。奥が深くて、思い悩んで泣いたりもして。

だけど、この学園に私は居たいと思った。


「あっ、ヴェストにフランシス。ちょっくらからかいに行ってくる。じゃあな」

ギルベルト君がそう言い、敷石から離れた瞬間にちょうど休み時間終わりのチャイムが鳴り響いた。だるい午後の授業。そう思うだけで気が気では無かったが、ギルベルト君に認められた事が何よりも嬉しかった。

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くるりん(?・ω・)(プロフ) - 薺さん» 貴重なご意見、ありがとうございます…!まず人種が違いますから、合併なんかも出来ないですし本当に愛し合っていないと結ばれないんじゃないかな、と考えると止まらなくて!拙い文章ですが、頑張らせて頂きます! (2017年3月31日 12時) (レス) id: 405f58ad2d (このIDを非表示/違反報告)
- はじめまして!最後まで一気読みしちゃいました!ヒトとクニの切ない描写がなんかたまりません…!更新頑張ってください! (2017年3月29日 20時) (レス) id: 8d03f80a9c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるりん(✿・ω・) | 作成日時:2017年3月12日 0時

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