15.辛いのは ページ15
芽吹いた桜の木を見上げると、長いと感じた期間は結構短かったんだなと感じる。毎日色々なハラハラや発見があって本当飽きない。菊さんに無理言って行かせてもらって、今では本当に良かったと思う。と、言ってもまだ始まりの季節だ。まだまだこれから精一杯青春できる。そう思うと胸が高鳴った。
ふう、と湯気を出しているコーンスープの缶の中に息を吹きかける。まだまだ熱々のスープが飲める。これから暑くなっていったら自販機からこの存在が無くなるだろう。この季節だけの特権だ。まあ暖かくなってきたこの季節にスープなんて飲んでいる人はそうそういないだろうけど。
アントーニョさんに笑顔で渡された缶を握りしめると、ほかほか温もりが伝う。横では俺の分も奢れ、と駄々をこねているロヴィーノ君。この人達はクニだ。私のようにヒトでは無い。私の感じている時の流れが、この人たちにとってはもしかしてあっという間なのかもしれない。私と過ごす時間なんてこれから歩んでいくだろう歴史と比べては塵くらいに短い期間なのかもしれない。
そんな事を思っては、私にとっては珍しいネガティブな気分になる。私がもしロヴィーノ君に好意を寄せていたとしても、彼がその想いを受け入れてくれたとしても、その期間は彼にとって瞬きほどなのだ。
だとしたらあまりにも残酷過ぎる。一番残酷なのはロヴィーノ君だ。私の死に様を拝まなければならない。まあ、例えばの話だけれども。
もしヒトがクニに恋しても結ばれる事は難しいだろう。どれだけ愛し合っても、どれだけ想っていても、全ての悲しみを担うのはクニの方。そう思うとこの学園でうかつに恋なんて出来ないな、と感じた。青春に恋はつきものなのに。何だか自分だけ取り残された気持ちになった。
ここで誰かを好きになってしまったら、すごい罪悪感に襲われるだろう。諦めなければならないだろう。そんな苦しい恋なんてあるだろうか。本来はキラキラ輝かしいものの筈なのに。
「何暗い顔してんだよ」
「……冷たっ」
いつから隣にいたのだろうか。突然ロヴィーノ君が、キンキンに冷えた炭酸飲料を私の頬に押し当ててきた。アントーニョさんに買って貰えたんだろう。お疲れ様です。
「元気が出ない時は頬に指当ててぐるぐる回せば良いんだぞ。これ、俺ん家の秘伝の方法な」
さっきまであんな事を考えていたのにいきなりそんな事言うなんて、心を見透かされていたのか。もし恋しちゃったらどうするんだ。
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くるりん(?・ω・)(プロフ) - 薺さん» 貴重なご意見、ありがとうございます…!まず人種が違いますから、合併なんかも出来ないですし本当に愛し合っていないと結ばれないんじゃないかな、と考えると止まらなくて!拙い文章ですが、頑張らせて頂きます! (2017年3月31日 12時) (レス) id: 405f58ad2d (このIDを非表示/違反報告)
薺 - はじめまして!最後まで一気読みしちゃいました!ヒトとクニの切ない描写がなんかたまりません…!更新頑張ってください! (2017年3月29日 20時) (レス) id: 8d03f80a9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるりん(✿・ω・) | 作成日時:2017年3月12日 0時