あ お ぞ ら に 叫 ぶ ** Kotaki Nozomu **

ぜ ろ ページ10

** Ryusei side **




俺には、大事な後輩がおる。



みっつ下の、望。



俺の通ってた中学のサッカー部で

同じポジション、そして同じ背番号で。



仲良くなるのにそう時間は

かからへんかった。






望「Aちゃん、流星さんとタメやで。」






そんな望がいっつも言うてた

"Aちゃん"という幼なじみ。



そのときは、まさか

同じクラスやとは思ってもなくて

軽く聞き流してたんやけど。






「…でも望、まだ中学生やで？」






女子の会話の中から

"望"って名前が聞こえてきて。



クラスでもわりと地味な方の女の子

でも、名前は、"A"。



そこで、繋がった。



世間ってこんなに狭いんや、って

このとき初めて思ったんやっけ。






望「Aちゃんのこと好きやねん。」






いつか望が言った。



あんな地味な女のどこがええのか

俺にはわからんくて。



…でも、思えばこれがきっかけ。



ほんまに地味やなー、とか

うわ頭良過ぎやろ、とか

案外運動神経ええんや、とか。



気付けばずっと目で追ってて

いつの間にか…好きになってた。



最初に話しかけたのは俺。



そのときは望の話題を出して

とにかく接点が欲しかった。



でも、話してるうちにわかった。



Aも望が好きや、って。



本人は気付いてなかったけど

女の子の話題に望が出てくるたびに

嫉妬してるみたいやったし。






流「、好きやねんけど。」






告白したのも俺。



望より先に告白すれば

まだチャンスはあるって思った。



付き合い始めて、デートして

手ぇ繋いで、キスして…抱いて。



こんな姿、望は知らんねんな

なーんて優越感に浸って。



けど、やっぱりAの

心までは奪えへんかった。



だから、突き放したのは俺。



そして、フったのはA。




:
:




流「、これでよかったんよな…」






望の部屋を出て、呟いた。



きっと…いや、絶対に

二人の間に俺の入る隙なんて

初めから無かったんや。



俺は、まだAのこと好き。



好きやからこそ、本当に

幸せになってほしくて。



ずっと笑っててほしくて。






流(ほんまに、大好き、でした。)






真っ青な空に向かって

心の中でそう叫んだ。




*

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