42話 お誘い ページ42
でも、最近ルミさんにたくさん妬いて、とてもしんどかったのを思い出すと、笑ってばかりもいられない気がした。
奥に入っていく目の前の智さんに声をかけた。
｢智｣
｢･･････なに？｣
不機嫌を装おうとしたのだろうけど、普段はほとんどベッドでしか呼ばない呼び捨てをしたら、ちょっとうろたえたせいで、表情が不機嫌になりきれてない。
｢花火、見に行きたい。一緒に｣
｢今から？｣
｢あと40分くらいで上がるから間に合うと思う｣
｢･･････行かねぇ。･･････祭ってのはなぁ、やらしいのしかいねぇんだぞ？｣
再び睨まれる。
けど、あんまり怖くない。
｢それさっきも聞いた。･･････お客さんが、車で高台に行ったら見えるって教えてくれたから｣
智さんは潜めていた眉を開いた。
｢･･････でもA、疲れたんでしょ？｣
言って見たのは、私の裸足の足元。
私は胸を張って言った。
｢大丈夫。車だったら下駄は脱いでれば大丈夫だし、浴衣はね、着付けできるから自分で直せるよ？｣
｢へ？｣
私は秘密を言うようにもう一度言った。
｢これ･････自分で着れるよ？ ･･････脱げちゃっても｣
目を見開く智さん。
これ以上ないくらい開いてる。
知らなかったの？ だって今日、店の女の子の浴衣を着せたのは私だし。着崩れも直してたよ？
智さんは息をのんだあと、｢やらし･･････｣と呟いた。
焦った私は胸元を押さえた。
そういう意味だったけど、やらしいって言われたら途端に恥ずかしくなる。
｢もういいよ。行かなくてもっ｣
怒って、バサバサ音を立ててお札を広げて数えはじめたら、レジに肘をついて身を乗り出した智さんが男前の顔で言った。
｢5分で終わらせろよ？｣
｢え？｣
透明感のある黒い瞳が私を意味深に見つめて来る。
｢したら店出るから。遅れんなよ？｣
私はキョトンとして言った。
｢花火･･････行くの？ でもまだ上がるまで40分もあるよ？｣
すると智さんは店の奥に入って行きながら、私に怒った背中を見せて言った。
｢んなの聞いたら、俺が待てねぇの！｣
プンプンしながらキッチンに消えていく。
その姿を見送って、私は吹き出した。
その夜の花火は半分だけ見れた。その半分も、ほとんど智さんの肩越しだったのは･･････幸せな思い出だ。
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ao(プロフ) - さとりさん» さとり様コメントありがとうございます。返信遅くなってごめんなさい。終わって脱力してました。嬉しいお言葉に、また作る力を貰ったような心地です。思いは溢れれど、不在の寂しさにまだ前を見れず。早く新作が書けるようになって、また喜んで貰いたいです♪ (2021年6月13日 10時) (
レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ともさん» とも様返信遅くなってごめんなさい。私もいつも最後の句読点を打つときは寂しくて手が止まります。でもこうしてコメントがいただけると思うと、早く投稿したくもなって。いい時間を過ごさせて貰えました。ありがとうございました！ (2021年6月13日 10時) (レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - しゅるるさん» しゅるる様おはようございます。返信遅れちゃってすみません。汗。･･･この空の下で幸せに、智君らしく過ごせていたら、ほんとに嬉しいです。早くメディアに出て来て欲しいなんて思ってませんがやっぱり会いたくなるその気持ちをここで昇華させて貰ってます♪ (2021年6月13日 10時) (レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ていくさん» ていく様おはようございます。返信遅れちゃってごめんなさい。腑抜けになっちゃってました。過去作修正したりしてました。過去作の続編とか、私も大好きです。喜んで貰えて良かったです♪ありがとうございました！ (2021年6月13日 10時) (レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - keiさん» keiちゃんおはよー。返信遅くなってごめんね。そうなの、背中もやばいの。抱きつきたくなるぅ。完結できてよかった。新作までは遠いけど、書けたらいいなって思ってるよー♪ (2021年6月13日 10時) (レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2021年5月25日 22時
