1話 パン屋の店長 5/27�� ページ1
｢おっしゃ｣
焼き上がりを確認した満足そうな智さんの声を聞いて、私は微笑んだ。
焼き上がったパンをオーブンから台の上に移した智さんは、温度が上がるのを待って、次に、待たせていた新しい生地をオーブンに入れた。
オーブンで生地を焼いている間、先ほど焼き上がったパンを冷ましつつ、一方で成型途中だった生地に再び向き合う。
とても忙しい、息つく暇もない作業だ。
私は智さんがパンを作っている姿を見るのがとても好きだった。
パンに向ける真剣な眼差しや、頼もしく感じる筋肉質な腕の動きや、･･････色気を感じる器用な指や。どれもずっと見ていられる。
｢A、もういいよ｣
声を掛けられて、私は作業していた手を止めた。時計を見ると、朝のオープンの時間が近づいていた。
私は恥ずかしくなった。
智さんへの愛を募らせ過ぎていて、時計を見損ねていた。そろそろ店に出る時間だって少し前まではわかっていたのに。
反省して、ナイロン手袋を外した。
｢Aちゃんお疲れ。表のことよろしく｣
今日もニヒルで渋い綾野さんの労いに頭を下げていたら、再び智さんから声がかかった。
｢今日の昼、商店街の人が来るから、話聞いといて？｣
｢私？｣
頷かれて、戸惑ったけど頷き返した。
これまでも商店街の人からの話を受けることはあったけど、それは急にやってきて聞く、店長へのちょっとした言付けだった。
こんなふうに智さんからお願いされてちゃんと話を聞くのは初めてだった。
｢それ聞いたら店上がっていいぜ｣
｢はい｣
私が返事をすると、智さんは生地をこねていた顔をこっちに向けて、作業を続けながら微笑んでくれた。
真剣な顔つきからの優しい笑顔に、ドキッとする。
夏場のオーブンの周りは凶器みたいに暑くて、微笑んだ智さんの額に汗が流れ落ちた。
智さんはその汗をＴシャツの袖で拭うと再び作業に没頭する。
･････そんな仕種一つにも萌えてしまう、夏なのに春真っ盛りの自分が恥ずかしい。
私は頭を冷やす代わりに流し台で手を洗った。
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ao(プロフ) - さとりさん» さとり様コメントありがとうございます。返信遅くなってごめんなさい。終わって脱力してました。嬉しいお言葉に、また作る力を貰ったような心地です。思いは溢れれど、不在の寂しさにまだ前を見れず。早く新作が書けるようになって、また喜んで貰いたいです♪ (2021年6月13日 10時) (
レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ともさん» とも様返信遅くなってごめんなさい。私もいつも最後の句読点を打つときは寂しくて手が止まります。でもこうしてコメントがいただけると思うと、早く投稿したくもなって。いい時間を過ごさせて貰えました。ありがとうございました！ (2021年6月13日 10時) (レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - しゅるるさん» しゅるる様おはようございます。返信遅れちゃってすみません。汗。･･･この空の下で幸せに、智君らしく過ごせていたら、ほんとに嬉しいです。早くメディアに出て来て欲しいなんて思ってませんがやっぱり会いたくなるその気持ちをここで昇華させて貰ってます♪ (2021年6月13日 10時) (レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ていくさん» ていく様おはようございます。返信遅れちゃってごめんなさい。腑抜けになっちゃってました。過去作修正したりしてました。過去作の続編とか、私も大好きです。喜んで貰えて良かったです♪ありがとうございました！ (2021年6月13日 10時) (レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - keiさん» keiちゃんおはよー。返信遅くなってごめんね。そうなの、背中もやばいの。抱きつきたくなるぅ。完結できてよかった。新作までは遠いけど、書けたらいいなって思ってるよー♪ (2021年6月13日 10時) (レス) id: 17a7f53f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2021年5月25日 22時
