6話 ページ10
｢どうしたの？｣
色白の男の子がちょっと笑い出しながら聞いてきた。
なんで笑ってるの？
ああでもそれより！
｢ね、ね、ネズミが･･･････｣
言いかけて、慌てて口を閉じた。
･･････中にネズミがいたの。
それで驚いて飛び出したんだけど、飲料メーカーの人間がネズミとか言っちゃいけないと思って何事もなかった顔をして、嫌だけど再び海の家に戻ろうとしたら、入口をくぐる手前で後ろから肩を掴まれた。
そしてその子は私を追い越して、先に海の家に入って行った。
それは、女の子みたいに綺麗な顔の方の男の子だった。
ドキッとした。
彼が私を追い越した瞬間、胸の中に何かが生まれた。私の五感を震わせる何か。
｢おっきいやつ？｣
言いながら小屋の中を見回している。
もうネズミがいたってばれちゃってる。ごまかせなかったみたい。
私は観念して男の子の後ろから指差した。
｢あっちの方にいたの。でも飲み物は全部段ボールに入ってナイロンでパッキングされてるから衛生的には大丈夫だよ？｣
必死な私の言い訳を、ポンと私の頭に手を置くことで黙らせた彼。
振り仰いだら何もかも分かってる顔で微笑んでて、私は目を見開いて言葉を飲み込んだ。
･････。なんだろう、このいろいろ持って行かれちゃうこの感じ。奪われて、身ぐるみ剥がされていく心地。
男の子は私の気持ちなど露程も知らない顔でのんびりと言った。
｢おいらさ、昔っからハムスターよく飼ってんの｣
な、なんの話だろう。突然。
男の子は部屋の奥へとゆっくり歩いていく。
｢放し飼いでさ、でもいっつもいるとこ一緒だから･･････すぐに見つかんの｣
言って、冷蔵庫の裏を覗き込んだと思ったら、にっこり笑って私を手招きした。
｢な、なに？｣
ニコニコしてる。
来いってこと？
嫌な予感しかしないんだけど。
でもあんまりにも笑顔が無邪気でキラキラしてるから、宝物でも見つけたんじゃないかって気がしてきて(そんなわけない！)、つい誘われるように近づいて、指を差す方を見たら･･････。
｢きゃーっ！｣
やっぱりいた、元気そうなネズミ！
私は思わず隣にいたその子に抱き着いてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 506人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ao(プロフ) - mizunaさん» mizuna様こんにちはー。ご趣味が一緒で喜んでおります！そうなんです、あの可憐さなのに、中身男前なのが、たまりません。移行したのでそちらも楽しんでくださいね〜。ありがとうございました！ (2019年9月8日 7時) (
レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
mizuna(プロフ) - aoさんこんにちは〜、まさかのすっぽかしで内心ヒヤヒヤしながら青春も感じる甘酸っぱさに身悶えて読んでます(笑)若い頃の彼は儚さと危うさが入り混じっていていいですよね、かと思えば男臭かったり･･･ｗ今作すごく好きです！移行先も楽しみにしてます♪ (2019年9月7日 10時) (レス) id: a740177e2c (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - keiさん» keiちゃんおはよう！高校生の智君、楽しんでね〜。残暑厳しいから、体調にも気をつけてね！新連載頑張るねー。 (2019年9月6日 9時) (レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ねいまーるさん» いえいえ、おきになさらず。私のお話なんて誤字だらけです。これからもよろしくお願い致します！ (2019年9月6日 9時) (レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
kei(プロフ) - aoちゃーん♪バタバタしていてやっと読めたよ♪なんかめっちゃ青春だね〜♪ドキドキきゅんきゅんするわ＾＾また更新楽しみにしているね♪ (2019年9月5日 13時) (レス) id: 6904188dc6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ao
| 作成日時：2019年8月24日 21時
