10話 ページ39
｢わぁ、凄い･･････｣
奥の和室にはビニールシートが床に敷かれていて、その上にたくさんの画材やキャンバスが所狭しと置かれていた。
秋から芸術を勉強しに留学するという話が私の中で一気に現実になった。
作風は凄く緻密で、オリジナリティに溢れていて、奥が深く、静かなのにエネルギーに満ち溢れていた。
ふんわりと可愛いイメージの智君が一掃される。
私よりも何倍も大きな、手の届かない立派な男の子に見えた。
息をするのも忘れて見入っていたら、ふいに手が握られた。
｢こっち来て｣
あっと思ったけど、ふりほどけずにそのまま奥に連れて行かれる。
手が私よりも大きいことが少しショックで、とても･･････胸がドキッとした。
｢これ、どう思う？｣
それは壁に立て掛けられていた一枚の海の絵で、油絵だった。
空が緻密に書き込まれていて、忘れていた郷愁を誘われる色合いだった。絵の奥にまだ何かが隠れている、そう思わせる絵だった。
いつの間にか智君の手が離れていることにも気付かず見入っていた。
｢書きかけで、この砂浜のとこに人か猫を入れたいんだけどどっちがいいか悩んでて。･･････どっち入れたらいい？｣
｢私？｣
頷かれて、戸惑った。
｢参考にするだけ？｣
んふふって笑ってる智君。
･･････まさか私の言ったままに書かないよね？ こんな凄い絵に私の意見を取り入れるなんて恐れ多い。
まさかだろうと思って、人と猫の両方がいいかな？って答えたら、目を見開き、｢両方！思いつかなかった！｣と言うと、嬉しそうにキャンバスの前に座り込んで、そこに絵を描き込み始めた。
遠くから風鈴の音が聞こえて来る。
障子が開け放たれていたから、縁側から午後の穏やかな風がよくそよいで来ていた。
私は縁側に座って、一身にキャンバスに向かっている智君の丸い背中と、庭に生えている種々の山野草とを交互に眺め、ゆっくりと時間を過ごした。
塀の向こうから、子供が外遊びから家に帰っていく声が聞こえて来る。
それは日常なのに、久し振りに聞く声で、非日常でもあった。
自分が充たされていくのを感じる大切な時間だった。
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ao(プロフ) - mizunaさん» mizuna様こんにちはー。ご趣味が一緒で喜んでおります！そうなんです、あの可憐さなのに、中身男前なのが、たまりません。移行したのでそちらも楽しんでくださいね〜。ありがとうございました！ (2019年9月8日 7時) (
レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
mizuna(プロフ) - aoさんこんにちは〜、まさかのすっぽかしで内心ヒヤヒヤしながら青春も感じる甘酸っぱさに身悶えて読んでます(笑)若い頃の彼は儚さと危うさが入り混じっていていいですよね、かと思えば男臭かったり･･･ｗ今作すごく好きです！移行先も楽しみにしてます♪ (2019年9月7日 10時) (レス) id: a740177e2c (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - keiさん» keiちゃんおはよう！高校生の智君、楽しんでね〜。残暑厳しいから、体調にも気をつけてね！新連載頑張るねー。 (2019年9月6日 9時) (レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - ねいまーるさん» いえいえ、おきになさらず。私のお話なんて誤字だらけです。これからもよろしくお願い致します！ (2019年9月6日 9時) (レス) id: 0d583270dc (このIDを非表示/違反報告)
kei(プロフ) - aoちゃーん♪バタバタしていてやっと読めたよ♪なんかめっちゃ青春だね〜♪ドキドキきゅんきゅんするわ＾＾また更新楽しみにしているね♪ (2019年9月5日 13時) (レス) id: 6904188dc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2019年8月24日 21時
