５話 ページ29
･･････そもそも出発前から、おーちゃんは旅行先がこんな近場の温泉で良かったのかなぁって気になっていて。おーちゃんなら、ヨーロッパとかニューヨークとか、美術関係の海外に行って見聞を広めたかったんじゃないのかな。
この温泉旅は、思いつきで呟いた私の最初の言葉で決まってしまったようなものだった。おーちゃんにも希望を聞いたんだけど、私と同じ、温泉でいいの一点張りで。
でももう来てしまったのだから、ならばいっぱいおーちゃんには楽しんで貰いたい。
私は決意も新たに固く誓った。
いい卒業旅行にしてあげたい･･････。
着いた旅館は美しく整えられた日本庭園が見事な、厳かで品のある、恐らくとても高額な格式ある高級旅館で、私は最初、館内で息をするのも躊躇った。ここで二酸化炭素を吐き出したらそれだけで料金をとられるんじゃないかと怯えて。
｢長旅大変でございました。ようこそお越しくださいました｣
和服姿の美人女将。美人画から抜け出て来たような色気と美しさを兼揃えていて、思わず私は魅入ってしまったんだけど、おーちゃんは近所のお風呂屋さんに来たようなテンションで落ち着いていて、さすがだなって惚れ直してしまった。
通された部屋は桧のいい香りのする離れで、縁側の向こうに私達だけの庭園が窓の外に広がっていた。この部屋だけの広めの露天風呂まで着いていて、ちゃんと、リビング用の広間と寝室が襖で別れていた。
女将さんが去った後、私は、テーブルの上の松にぃからのウエルカムシャンパンを見つめながら思わずおーちゃんの背中にしがみついた。
｢お、お、おーちゃん、ここって、王様が泊まる部屋なんじゃあ･･････｣
吹き出して笑ったおーちゃんはやっぱり平常通りで、シャンパンが注がれたグラスを持って振り返った。
｢冷えてる｣
｢う、うん｣
｢乾杯しよ？ 喉乾いた｣
｢そ、そうだね･･････｣
私はおっかなびっくりおーちゃんの隣に座った。
するとまた吹き出して笑うおーちゃん。
私は思わずびくっとしてしまった。
｢な、なに？｣
おーちゃんはお腹を抱えて笑ってた。
｢そっちに座椅子あんのに｣
見ればおーちゃんの向かいの席に大名が座るような肘置き付きの座椅子が置かれていて、今私が座ったところには座布団もなかったことに気づいて、恥ずかしさで顔が熱くなった。あと、私は不安の表れか、おーちゃんに寄り添いすぎていた。
私、どれだけ緊張しちゃってるの？
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ao(プロフ) - kikiさん» kiki様こんにちは。主人公ちゃんいい子なんで、たまに黒くしよう黒くしようとしてるんですが、なかなか染まってくれません。恋人が素敵だからでしょうか。私も青色さんに綺麗な色にしてもらいたいです！ (2019年2月26日 16時) (
レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - もちろん、こちらも拝読致しております！主人公ちゃんの清く芯のある人柄が凄く素敵ですねー！こちらも見習う事が多々ありまーす。感謝の気持ちって、ホント大事ですよね。 (2019年2月25日 18時) (レス) id: 53337431dc (このIDを非表示/違反報告)
ao(プロフ) - わー、cocoro様コメント嬉しいです。お元気でしたか。何度も読み返したくなるようなお話を頑張って作るので、是非遊びに来てくださいね。一緒に楽しみましょう！萌えてくださーい。 (2019年2月25日 9時) (レス) id: a016946e50 (このIDを非表示/違反報告)
cocoro(プロフ) - aoさん、お久しぶりです。またこの子達に会えて嬉しいです。私はこれからも、いやもしかしたらこれまで以上にここに糖分補給に立ち寄るであろうと思われます(笑)。また一緒に楽しませてください。 (2019年2月24日 20時) (レス) id: 8d2a7d356c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あお
| 作成日時：2019年2月19日 20時
