36 接近 ページ36
･･････くすぐったい。
私なんか、見ての通りだと思うのに。聞いてくれるなんて、智君って本当に優しい、いい人だ。
｢最初に言ったよ？ 近づかれたことないって｣
｢近づいてなくても男は作れるよ？｣
｢ハハハ、ないない。こっちも、いいなぁって思う間もなく転校しちゃってたしね？｣
･････でも、言ってからそれは違うなって思った。訂正しなきゃ。
･･････智君には、転校してきてまだ二ヶ月も経ってないのにもう恋しちゃってる。
恋に落ちるのって、時間じゃないんだなぁ。今まで出会って来なかった、ただそれだけのことだったんだ。
｢こんな風に、男の子と二人でベンチに座ったこともないよ｣
今、隣の智君との距離は子供一人分くらい空いている。･･････と思ったら、智君が座り直して拳二つ分くらいに近づいた。
ドキンとしていたら、智君の手がベンチに置いていた私の手に重なった。
｢こんなのも、ない？｣
綺麗な低い声。その声で、背筋がピリッと痺れた。
多分、立っていたら腰が砕けていたと思う。それほど甘い声だった。
うんって顔を上気させながら頷いたら、手を握る力が少し強くなった。
｢･･････ちっちゃい手｣
｢女の子にしては大きい方なんだけど｣
智君も手が大きかった。っていうか、綺麗。
｢これから、よろしくお願いします｣
私が照れ臭さをごまかすように頭を下げると、智君も言った。
｢えっと、こちらこそ？｣
ぎこちない智君の返答を受けて、二人で笑い合った。
それから私たちは手をつないだまま、またお喋りして、智君は夕飯の前に私を自宅マンションの前まで送ってくれた。
｢良かったら、今度うちに遊びに来てね。お母さん仕事でいない日も多いんだけど｣
｢あんがと。･････うちもおいで？｣
｢うん！｣
二人、目が合って、沈黙が出来た。
でも、それはくすぐったい沈黙。
私はその夜興奮して眠れなかった。
生まれて初めて出来た彼氏。
自分には訪れないと思っていた浮かれ気分のばら色の高校生活が始まりそうな予感に武者震いさえして。
･･････でも、ここからがさよならのカウントダウンの始まりだった。
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ao(プロフ) - あっちゃんさん» あっちゃん様、ご感想ありがとうございます。本当に見ているだけで、ほぅーっとなっちゃいます。口がポカーンと開いちゃって。美人さん過ぎます。あっちゃん様もご自愛なさってくださいね。頑張ります！ (2018年12月13日 9時) (
レス) id: 1822afa89a (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - はじめまして。いつもありがとうございます。ほんとに寒いですよね。成瀬期の彼はもう見ているだけで心も体も癒されます。なにかと世話しなくなる時期ですがお体を大切に、素敵なお話をお待ちしております。 (2018年12月12日 9時) (レス) id: cd7b6e55f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ao
| 作成日時：2018年12月1日 16時
