7 頭のいいイケメン ページ7
｢どうしたのA｣
｢何が？｣
｢っていうかAなの？｣
｢用事がないなら行くね。日直なの｣
朝からもう何人に聞かれたか分からない質問にうんざりしながら先を急ぐ。
職員室に入ろうとして、出てきた男の子とぶつかりそうになって身を引いた。
｢あ、ごめん｣
｢こちらこそ失礼しました。ドアに近づきすぎていました｣
｢いや、そんなことないけど｣
ちょっとびっくりしたような声を上げた男子生徒。
会釈して中に入ろうとしたら、肩を掴まれた。
｢もしかして池谷さん？｣
顔を見たら、物凄く爽やかなイケメンだった。
イケメン･････。イケメンというだけで今の私には拒否反応が起こる。
｢どちら様ですか｣
｢知らない？｣
あー、最悪な人だ。イケメンっていうだけで自分の顔を知らない奴はいないって思ってる最悪な部類の人間だ。
私は盛大な溜息を吐いた。
･･････今まで人前で溜息なんて吐いたことなかったけど、もういいのだ。素敵女子はもう捨てた。智君が手に入らないなら、もう頑張る必用なんて何もない。
｢ああ、ごめん。こっちが一方的に池谷さん面白いなって見てたから、池谷さんとは顔見知りな気がしてて。俺は櫻井翔。2年1組ね｣
櫻井！
私の運命を分けたあの日に、最初にケチを付けたあの櫻井！
確かにモテる顔のイケメンだった。男っぽいイケメン。お利口そうで、育ちも良さそうな。
･･･････でも私にはどうでもいい。
もうイケメンにはこりごりだ。
｢随分イメージチェンジしたんだね｣
櫻井先輩は私を見て面白そうに笑った。
･･････智君ショックで、素敵女子を極めるのに飽きた私は今、完全に手を抜いていた。
早起きして巻いていた自慢のカールもやめたし、髪もプリンになるのが嫌だったから、黒髪に染め直した。マニキュアもやめたし、化粧もやめた。唇が荒れるから薬用リップのみ。スカートも冷えるとだめだから規定の膝丈に戻した。シャツの衿もきっちり上まで止めて、鞄につけていた装飾品もすべて取り払った。
ついでに無駄に振り撒いていた笑顔と愛想もやめた。
｢前は雑誌から抜け出たみたいな今時の可愛い子って感じだったけど、今は時代に流されない正統派の美人って感じ｣
｢そうですか。失礼します｣
なんにも響かない。相手が智君じゃなきゃ何にも。
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作者名：あお
| 作成日時：2018年3月19日 14時
