38 純情 ページ38
｢おい、溜息つきながら飯作んな。まずくなるだろうが。楽しい気分でやらなきゃ食う奴も旨くなくなる｣
凛々しい顔できっぱりと言う松本君。
その通りだと思ったので、反省して口角を上げた。
｢松本君、将来自分のお店持ったらいいのに。きっと凄い人気店になると思う。飲食系の｣
揚げながら何気なく言ったら、隣の松本君の手が止まった。
｢･････すげぇな。なんで分かったの。俺の夢｣
隣を見れば、熱のこもった目で私の中に何かを探すような松本君がいて、目をそらす。
｢･････見てればわかるよ｣
｢俺のことそんなに見てくれてるのおまえだけ｣
｢そこまでは見てないから｣
もう。失敗した。
松本君がちょっとこっちに身を寄せて来る。
触れてる腕から何かが伝わって来そうで、避けたいけど壁際で避けられない。
唐揚げ揚げてるのに松本君のつけてる甘い香りの方が強くなる。
｢ちょ、ちょっと･････近い｣
｢ニノ、Aにキスしたんだろ？｣
な、名前呼びに変わってるし！
｢大野さんにあいつ絞められてたから･･って、失敗した｣
智君の名前だされたら途端に私の頭の中は智君一色になる。
離れる松本君の悔しそうな顔見てたらちょっと可笑しくなって笑ってしまった。
｢おい、なんか馬鹿にしてるだろ｣
｢してない、してない｣
｢わらってるじゃねーか。･････だまんねーとキスすんぞ。すっげー濃いやつやってやんぞ！｣
言われるほどに笑ってしまう。
焦げちゃいけないって、慌てて揚げて、火を止める。
｢準備万端だな｣
｢違う違う！危ないから消しただけ｣
顎を捕まれて目をむいたらやってくる他のみんな。
｢今から松潤がAちゃんにキスするって言ってるよ！ずっるいよねー。次次、次俺ね｣
元気にはーいって手を挙げる相葉君はどうして止めようとしてくれないの。
｢えー、おれはやだ、松潤の後は絶対嫌だ。だって絶対凄いやつするだろ。俺絶対負ける｣
って言うのは櫻井先輩。
･････櫻井先輩はもしかして童貞なのかな？
って、喜びかけたのに。イケメンでも童貞の人いるんだって。
｢翔ちゃんはベッドの上の方が本領発揮できるタイプだもんね｣
なぜかどや顔の二宮君。櫻井先輩もどや顔だ。
･･････やっぱりイケメンに童貞はいないのか。
なんか嫌になってきて脱力しちゃう。
世の中にもう純情は残ってないのか。
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作者名：あお
| 作成日時：2018年3月19日 14時
