33 昼休み ページ33
私はそれを校舎の2階の窓から眺めてた。
･･････ちょっと今、男性恐怖症気味で近づけなくなっていて。
･･････あいつのせいだ。
｢次は翔ちゃんね｣
楽しそうな元凶の二宮君。子供みたいだ。
言われた櫻井先輩は、頭をかきながらも側転に挑戦して、上手に回って拍手をもらっていた。
さっきからやっているのは、誰が一番綺麗に側転ができるかっていう遊びで、秋空の下、のどかな昼休憩の光景だった。
起こる拍手は校舎からも聞こえていて、気付けば私以外にもたくさんの人が校舎の窓や渡り廊下から智君達を眺めていた。
その光景はさながら彼らのライブツアーを見に来たお客様で、でも彼らは見られることに慣れているのか、気にした様子もなくセンターステージで楽しく遊んでた。
みんな運動神経がいいから側転が出来ない人なんて誰もいなかった。
中でも一番綺麗だったのは智君。
智君の番になって、二宮君に何か言われた智君は、嫌だって首を振ってたけど、ふとこっちを見上げてきた。
ドキッとした。
智君と目が合った気がして。
思わず隠れようとしたけどすぐに視線が外されたから、気のせいかなと思って、安堵してまた窓枠に肘を着いた。
｢はい、じゃあ今から大野さんの側宙ね｣
側転じゃなくって側宙ってなんだろうって見てたら、軽く助走をつけた智君は踏みきって、なんと宙に浮いた側転みたいなのをやった。横向きに宙に浮いてるの。
それだけでも凄いって思っていたら、智君たらそのまま勢い余ってバック転までしちゃって周囲がどよめいた。
直後に上がる悲鳴と拍手喝采。
私は青ざめた。やだやだ、そんなことをしたらまたファンが増えちゃう！
その時、焦る私とにやって笑う二宮君の目が一直線に重なって、この騒ぎは私を困らせるための確信犯だって分かって、思わず拳を握った。
根性悪い。
わざと智君を見世物にしたんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 359人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あお
| 作成日時：2018年3月19日 14時
