28 往生際 ページ28
｢あーやだやだ、何そのデレデレした顔！キリッとした俺らに鬼冷たいAはどこ行った！｣
怒鳴る二宮君に、唇を尖らせる私。
そんなこと言われても･･････。
｢なに、その可愛い顔！大野さんいたら、あーたユルユルになっちゃうのね！｣
｢そ、そんなことないもんっ｣
｢もん！もんって言ったよこの人。･･････決まりね、今度の日曜はみんなで唐揚げパーティね。もちろんオジサンも一緒よ。みんなでこのおかしな女を愛でてやる！｣
二宮君の宣言にみんな挙手して賛成する。
｢･･････おじさんって、おいらのこと？｣
｢他に誰いんのよ｣
｢ははっ｣
いや、笑ってる場合じゃないから。智君はおじさんじゃないから！
あれよあれよという間に決まった唐揚げパーティ。
｢男ばっかじゃん。Aちゃん嫌だったら言えよ？｣
智君の気遣いに思い切り首を横に振った。
智君と過ごせる時間があるなら死んでも行くに決まってる。･･･それに、みんなと一緒だったら許される気がして。
｢そっちの子もおいで？｣
って智君の言葉に、里穂ちゃんは喜びで本気で泣き出しそうだった。
･･･････私は浮かれていた。
このひととき、智君と以前に戻れたみたいな気がして。そんなことないのに。私が作った距離は、更にずっと広がっていたと言うのに。
｢智｣
話って入ったツヤのある声に振り返ったら、いつの間にか、智君と付き合いはじめたって噂の3年の先輩がそこに立っていた。
一瞬にして頭から氷水を掛けられたみたいな気持ちになった。
以前に私が目指していた素敵女子の梨本沙織先輩。
栗色の綺麗なロングヘアの毛先がくるんって回ってて、ツメもピンク色に塗ってある。
衿元に見えた華奢な金色の鎖が色っぽくて。
｢ここにいたんだ。なに、すっごいイケメン集団だね、紹介して｣
俺の彼女って言葉を聞きたくなくて、私は
早口で「じゃあね」って言うと、みんなの返答を待たずにその場を去った。
逃げないと。
逃げなきゃ私、多分死んじゃう。
それなのに馬鹿な私は食堂の出口でちらりと振り返った。
息を飲んだ。
そこで見たのは、智君の首に背後から両手を回して抱き着く梨本先輩の姿。密着してる身体。
首がちぎれる勢いで元に戻すと、ダッシュでその場を去った。
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作者名：あお
| 作成日時：2018年3月19日 14時
